2023年度Aセメスター水曜5限
OpenAIが2022年11月30日に「ChatGPT」を公開すると、すぐに多くの人々がサービスにアクセスし、世界のユーザ数は4日後の12月4日に100万人を超え、2か月後の2023年1月には1億人を突破したと言われています。ChatGPTは生成型AIであり、ウェブ上に存在する何十億もの事例に基づいて訓練されているため、小説を書くことも、プログラムコードをデバッグ(プログラム内のバグを見つけて改修)することも、複雑な質問に答えることもできます。また、交わした会話をすべて記憶しているため、回答内容を正したり、以前より詳しく説明することができ、人間と機械との対話を、より洗練された自然なものにします。
すでに一部企業は、ChatGPTをオペレーションやサービスに組み込むための開発や実証実験を行っています。皆さんが社会に出るころには、「ChatGPTがなかった世界にもう戻れない」と思うほど、世の中に浸透したサービスになっているでしょう。
デジタル化が進み、目まぐるしく新商品・サービスが生まれる現代は、“正解がない不確実な世界”といえます。大企業だからといって、必ずしもヒット商品・サービスが生まれるわけではありません。特に、実際にやってみないと成功するかわからない新規事業については、アクセンチュアの調査によると、立ち上げに成功したと躊躇なく言える経営幹部はわずか6%にとどまっています。
それでは正解がない不確実な世界で、成功する新商品・サービスを生み出すためには、どうすればよいのでしょうか?その答えの1つとして、ユーザ視点での課題・インサイト(潜在的な欲求)の見極めと、新商品・サービスを素早く市場投入する仕組みを活用できることが重要です。
私たちアクセンチュアは、世界有数の総合コンサルティング企業として、世界中の様々な企業と一緒に、新しいサービスをビジネスとして実現させてきました。その経験と実績を活かし、本授業では、初学者を対象に、アクセンチュアの現役コンサルタントと共に、新商品・サービスを生み出すプロセスを身に付けることを目的としています。
具体的には、リサーチやインタビューをインプットに課題・インサイトを抽出し、デザインシンキングという手法で“今ほしい未来”の新しいアイデアを生み出します。そしてそのアイデアをもとに簡易プロトタイプ(検証のためのサービス・もの)を素早く作成・検証し、最終発表ではストーリーテリング(ビジネスを「物語」を通して表現する手法)を活用して、実際の企業の方へプレゼンします。
・コンサルティング
・インサイト抽出・深掘り
・デザインシンキング
・アイディエーション
・プロトタイプ検証
・ビジネスソリューション
・サービスデザイン
・ストーリーテリング
・プレゼンテーション
・大学・企業やユーザの課題をリサーチし、客観的に分析する手法を学ぶことで、インサイトを抽出・深掘りする
・UX(ユーザ体験)、ビジネス、テクノロジーなどの視点を踏まえてデザイン思考を学び、ソリューションを考える
・最適なトライアル版を素早く作り、評価を的確に分析・反映する手法を学び、実践する
・ストーリーテリングをもとに人を説得する技術を学び、発表する
・「私たちが今ほしい未来は何か?」という正解がない「問い」に対して、自分なりの解をみつける技術を学ぶことで、不確実な世の中も楽しめるようになる
回 | 日 | 内容 |
1 | 10/4 | ガイダンス 忍びよる価値:手放せなくなるサービスはどう作られるのかゼミに関する説明(ゼミの目的と目標、進め方、スケジュール、評価方法) |
課題・インサイトの抽出
2 | 10/11 | ビジネス視点の課題を考える ビジネス講義をもとに課題を抽出 |
3 | 10/18 | インサイトを抽出する 課題を深掘りし、インサイトを抽出 |
インタビュー
4 | 10/25 | インタビューをする インタビュー設計演習インタビュー |
5 | 11/1 | インサイトを再考する インタビュー結果の考察 |
デザインシンキングによるアイディエーション
6 | 11/8 | 今ほしい未来の仮説を考える① デザインシンキング講義・演習 |
7 | 11/15 | 今ほしい未来の仮説を考える② デザインシンキング演習 |
アイデアのブラッシュアップ
8 | 11/29 | 業界エキスパートにインタビューする アクセンチュアの業界エキスパートにアイデアを発表 |
9 | 12/6 | 今ほしい未来の仮説を考える③ インタビューを踏まえた仮説更新 |
簡易プロトタイプによるアイデア検証
10 | 12/13 | 簡易プロトタイプの作成① プロトタイプ作成演習 |
11 | 12/20 | 簡易プロトタイプの作成② プロトタイプ作成演習 |
企業の方への最終発表
12 | 12/27 | 発表の準備をする③ 最終発表準備 |
13 | 1/10 | 発表(発表10分、フィードバック10分程度) ※受講者数により授業時間を延長する可能性あり |
◎振り返りフォーム(80%)
…各回で学んだ知識、概念、理論に関する簡単な復習。疑問点や感想も書いてください。
◎発表(20%)
…第13回授業で発表を行います。教員(10%)、アクセンチュア社員(10%)。評価基準は以下の通りです。
<評価基準>
準備への貢献(各チーム担当のアクセンチュア社員が評価)
・チームワークへの貢献:授業の中でチームメンバーと交流し、チームワークの向上に寄与する。また、チームにとって有益と思える内容は、積極的にフィードバックを行うことができる。
・アイデア出しへの貢献:多様な視点を持って活動に参画し、自分のアイデアを話すことができる。また他者からの意見を取り込むことで、アイデアを進化させることができる。
・アウトプットへの貢献:グループワークに順応するとともに、新たな、または不慣れなタスクにも積極的に取り組むことができる。また、与えられたパートのタスクについて期日を守ってこなすことができる。
発表への貢献(教員、アクセンチュア社員が評価)
・内容のわかりやすさ:ストーリーテリングの手法で、伝えたいことを簡潔にわかりやすく話すことができる。
・話し方の適切さ:聞き手を意識して、はっきりした発音で話すことができる。
また発表時間を大幅に超えないようにコントロールできる。
・質疑応答のわかりやすさ:質問者の意図を理解して、受け答えができる。
質問内容がわからない場合は、質問者に質問して内容を確認することができる。
・講義前半でチーム編成し、その後はチームでの作業が中心となるため、参加さ全員に講義へのコミットを求めます。体調不良などのやむを得ない事情による欠席を除き、すべての回に出席してください。
・ゼミの内容は、リサーチ・インタビュー/アイディエーションについての初学者向けのため、事前の関連知識は特に必要ありませんが、グループワークへの積極的な参加が求められます。
・インタビューやプレゼンテーションを実施する講義の前には、その準備を宿題とします。また、講義時間内に課題が終わらなかった場合も、終わらなかった範囲を宿題とする可能性があります。
・20名程度(1-2年生が主対象、3-4年生も若干名参加可能です)
・履修を検討している方は初回のガイダンスに必ず出席してください。
ガイダンス終了後、履修希望の方はアンケートに記入をお願いします。
・希望者が20名を大きく上回る場合には、アンケート内容をもとに選抜する可能性があります。
履修者の決定は第2回講義までにメールにてお知らせします。
アクセンチュア株式会社
髙橋史子
(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)
takahashi[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp([at]を@に書き換えてください)
総合文化研究科 准教授 髙橋 史子