教養学部生のための
キャリア教室

教養学部生のためのキャリア教室

授業趣旨

国内外で活躍している各界の社会人をお迎えし、自身の進路選択、仕事の内容、人生の転機や悩み、生き方をお話いただくオムニバス形式の授業です。多様な価値観や進路選択を知ることで、グローバル化や超高齢化、高度情報化などの変化にさらされる現代で柔軟に自らのキャリアを形成するための基礎、考え方を学びます。 ゲストスピーカーは企業、官公庁、大学・研究機関、国際機関などグローバルに活躍するトップリーダーから若手まで、多様な幅広い年代の方を予定しています。
すでに具体的に進路を定めている人はもちろん、「社会人ってキツくて大変そうだけど本当のところどうなのだろう」と仕事と生活について話を聞いてみたい人、「何をやりたいかわからないけれど進学選択の際に困らないようにとりあえず高い点数を取っておこう」と、考えるのを先延ばしにしている人も歓迎します。専門課程に進む前に自分の「これから」について考えてみましょう。

2022A ゲスト講師紹介

小見 和也

小見 和也

H.U.グループホールディングス株式会社 執行役 研究開発担当 合同会社H.U.グループ中央研究所 社長 富士レビオ株式会社 取締役、株式会社エスアールエル 取締役 など

1979年新潟県出身. 東京大学文科3類入学, 医学部健康科学・看護学科卒業. 同大学院医学系研究科博士課程を修了後(保健学博士), 検査薬・製薬企業にて検査・医薬品の研究開発, 大学・ベンチャー企業との共同研究開発, M&Aなどを担当. ヘルスケア領域で新技術/製品の発案・発明, 製品化・事業化などを主導するとともに、技術系人材育成・イノベーション型組織の設計・運営に携わっている.

年内最後となる今回の授業では、”技術系経営者”として活躍される小見和也様にご講演いただきました。小見さんは本学文科III類に入学し、大学院医学系研究科博士課程を修了後(保健学博士)、検査・医薬品の研究開発, 大学・ベンチャー企業との共同研究開発, M&Aなどを担当されたご経験があります。また、新技術/製品の発案・発明, 製品化・事業化などを主導するとともに、技術系人材育成やイノベーション型組織の設計・運営にも携わっておられます。

講義では、ご自身のご経歴と、現在のお仕事内容についてご説明された後、未来の予測が難しく、日本企業の衰退が見られる中で、二十年後を担う学生たちにメッセージをくださいました。一つ目は、自分の人生を生きる、つまり、自分にとっての「幸せ」の定義を早く見つけるということ。二つ目は、好きなこと・夢中になれることを通じて一万分の一の人材になる(稀少性を獲得するということ、人に勝っているという軸から人と違うという軸へ)。そして、三つ目は、イノベーションを起こすということです。

「自分自身が様々な経験をしてきて、そこで得たものを次の世代に共有していきたい」と話す小見さんによる照然たるメッセージが学生にとって大きな刺激、励みになったと思います。

松本 岳(東京大学大学院総合文化研究科 修士課程)

高祖 歩美

高祖 歩美

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)広報室長。

東京大学を卒業後、首都大学東京大学院で博士号を取得。ライフサイエンス統合データベースセンター、科学技術振興機構、東京大学、人間文化研究機構において広報職に携わり、現職。2018年に日本における科学コミュニケーションの英語コミュニティ、ジャパン・サイコム・フォーラム(Japan SciCom Forum)を共同で立ち上げ、運営にあたるほか、科学報道をテーマとした調査研究を行っている。

本日は、複数の研究機関で広報担当として活躍されてきた高祖歩美さんにご講演いただきました。

高祖さんは、英国で高校を卒業し、本学を卒業後、首都大学東京大学院で博士号を取得されました。その後は本学や人間文化研究機構などで研究成果に関する広報職に携わり、現在は国立遺伝学研究所で同研究所を中心としたナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の広報をされています。本講演では、学生時代の話や広報の業務についてだけでなく、育児や家庭についてもお話しいただきました。

 ご講演では、まずご自身の学生時代についてお話しされました。研究室に配属された際の葛藤と大学院へ進む際のエピソードなどについて話されました。その後は、大学や研究機関の広報の業務についてお話しくださり、特にノーベル賞授賞式の内幕や、江戸の料理書に関する研究成果のアウトリーチ活動といった具体的な業務についての話には、多くの学生が興味深く聞いていました。また、育児の話では、「子供の成長に負けないように自分も日々成長したい」との言葉に勇気づけられる学生がいたようです。また、授業終了後、学生からは具体的な質問が多く寄せられ、関心の高さが伺えました。高祖さん曰く、広報とは、人々の意識や行動の変化を促すことを目的とした活動であり、「誰に」「何を」「どのように」伝えるかが重要な要素になるそうです。研究機関の広報は、研究と社会をつなぐためのものであり、その重要性は計り知れません。広報という仕事について、そして、その実践について考えることは、学生にとって有意義な時間になったと思います。この度はご講演いただき、ありがとうございました。

(松本岳 総合文化研究科 修士課程)

佐野 悠樹

佐野 悠樹

内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付

1992年生まれ。桐朋高校(都内)を卒業後、理科2類に入学。学部ではオーケストラサークルに所属。農学部に進学後、農学生命科学研究科修士課程を修了。副専攻として「科学技術インタープリター養成プログラム」も受講。2017年、農林水産省入省。農林水産省では、農林水産研究行政や農業資材(農業機械、肥料など)行政等を担当。現在、内閣官房で国家の危機管理を担当。趣味は楽器演奏(ファゴット、バイオリン)、テニス、ボードゲーム。

本日は内閣官房にお勤めの佐野悠樹さんにご講演いただきました。

佐野さんは大変気さくな方であり、また今年度の登壇者の中では最もお若く学生とも年代が近いという事実も相まって、参加者全員がとてもリラックスした様子の授業で率直なお話を多くお聞きすることができました。

佐野さんは農学生命科学研究科修士課程を修了した後、2017年に農林水産省に入省されました。修士課程においては植物の遺伝子解析の研究をされており、農林水産省では、農林水産研究行政や農業機械、肥料などの農業資材行政等を担当されていたということです。

そして昨年、内閣官房へ出向し、現在まで1年半ほど、危機管理に関する部署で働いているということでした。

佐野さんの内閣官房での業務は農林水産省の業務とは異なる点も多かったそうで、業務にあたってはマニュアル・本で勉強をすることも多いとの事でした。また、担当業務の性質上、緊急対応が必要な場合には昼夜を問わず直ちに駆けつける必要があるとおっしゃっており、講義当日もまさに未明に対応を求められていたというお話があった際には、学生のうちに驚きと感嘆の表情が見られました。

“仲が良い”という定松先生からは「自由人」との紹介があったように、特定の事や物に固執する事なく、急な異動にもフレキシブルに対応することができる方だという印象を受けました。

今まさに官僚としてキャリアを積まれている方の”生の声”を聞けたという点は私にとっても大変貴重な経験となりました。

この度はご講演いただき、誠にありがとうございました。

仲川久礼亜(総合文化研究科 博士課程)

中村 有沙

中村 有沙

フリーランス 株式会社オアシススタイルウェア 前・代表取締役 NPO法人ハナラボ理事

2011年東京大学経済学部経営学科卒業。在学中は「学生のためのビジネスコンテストKING運営委員会」に所属。新卒で水道工事業を手がける株式会社オアシスソリューションに入社。売上全国1位を取るなど営業職として4年間活躍後、人事部を立ち上げる。人事部在籍中、自社の制服リニューアルを担当したことがきっかけで、スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を考案。2017年ワークウェアスーツ販売のため株式会社オアシススタイルウェアを立ち上げ、代表取締役に就任。2022年に退任し、かねてから課題意識を持っていた介護業界でフリーランスとして活動中。プライベートでは、社会課題の解決を通じて女子学生のリーダーシップと創造力を育むNPO法人ハナラボの理事を勤める。1児の母。

本日は現在介護業界においてフリーランスでお仕事をされている中村有沙さんにご講演いただきました。

中村さんは経済学部経営学科卒業後、水道工事業を手がける株式会社オアシスソリューションに入社されました。営業職として4年間活躍後、自社への問題意識から人事部を自ら提案し立ち上げを行われました。人事部在籍中には、スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」の考案が功を奏し、2017年にはワークウェアスーツ販売のため株式会社オアシススタイルウェアを立ち上げ、代表取締役に就任されました。そして本年からは、心機一転、介護業界にてフリーランスでご活躍されています。

中村さんの華々しいキャリアと明るく快活に話される姿を見ると、迷いなくキャリア選択をされてきたように見受けてしまいますが、講演の中では、実際は何度も進路に迷い挫折も経験し、自身の引っ込み思案な性格とも愚直に向き合った結果、現在があるということをお話くださいました。

人生・仕事における選択に際してどのようなことを思いどのような点を重視したか、具体的にどのようなアクションが功を奏したかということをかみ砕いてお話しくださり、我々にとって大変励みになるだけでなく、一人一人が自身と向き合う上で活かせる知恵を多くご教授いただきました。

中村さん自身が最後におっしゃった3つのメッセージ、

やりたいことは試しに先取りしてやってみること。

困った時には尻込みせず人に教えてもらうこと。

世の中のために能力を活かすことを考えること。

これらを心の隅に留めて、私自身これからの人生の選択を行いたいと思いました。

正に「先達あらまほしきこと」だなと実感させていただいたご講演でした。

中村様、この度は大変ありがとうございました。

仲川久礼亜(総合文化研究科 博士課程)

藤掛 直人

藤掛 直人

株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース 事業戦略マーケティング部 部長

1991年生まれ、大阪府出身。2014年東京大学経済学部卒業、同年株式会社ディー・エヌ・エーに⼊社。スマホゲームのプロデューサーを歴任後、2017年よりスポーツ領域の新規事業開発を担当し、子会社立ち上げ・PMI・経営戦略立案を主導。体制構築後はマーケティング領域を統括し、観客動員数リーグ1位や、YouTubeチャンネル登録者数 JリーグとBリーグ含め1位などの成果を収める。著書に『ファンをつくる力 デジタルで仕組み化できる、2年で25倍増の顧客分析マーケティング』(日経BP、2022年)。

今回は株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース事業戦略マーケティング部 部長の藤掛 直人様にご講演いただきました。

 藤掛さんはまずご自身のお仕事であるスポーツビジネスについて、どのように立ち上げ、またどのように拡大していったのかを詳しくお話しくださいました。周囲の物事や現象をよく観察し、そこに潜むチャンスと課題に気づくことの大切さが強く感じられました。なた、学生時代の部活や趣味と、今のお仕事内容との関連のお話も大変興味深く、今部活で活躍している学生にとっては特に刺激的だったのではないかと思います。

 ご自身の経験から「無駄な経験などはない」、他人の基準や他人の評価などの「他人軸」を気にせず、焦らずに勇気を出して、「自分のやりたいことは何か」をきちんと考え、「自分軸」を作ることが大切ということもお話しくださいました。さらに、「今やりたいことが決まっていなくても大丈夫、興味のあることにチャレンジすることで、少しずつ進路が明確になっていくということも語られました。

今大学生である私たちは、急速に変化している社会への不安や、これからの進路の選択への躊躇など、人生に対する迷いがたくさんあります。未来に対して、自分のやりたいことを明確にできなかったり、間違いや失敗を恐れたり、他人の目線を気にしすぎてしまったりすることがあります。藤掛さんのお話から学生は勇気をもらったのではないかと思います。

この度はご講演いただき、誠にありがとうございました。

楼 悦(総合文化研究科修士課程)

古川 千絵

古川 千絵

Simon Fraser University(カナダ)専任講師(Department of World languages and literatures)

東京都出身。98年東京大学文科二類入学、文学部行動文化学科(社会学専修)卒業。大学院では教育社会学専攻。博士課程進学後の2005年、米国イリノイ大学(Educational policy studies)に移籍。在学中は結婚、夫の転職に伴うシアトル、セントルイスへの転居、親の癌闘病、不妊治療と出産等で研究が何度も中断するも2016年博士号取得。大学院から非常勤等で続けていた日本語教師の経験を生かし、2018年サイモンフレーザー大学で日本語講師となる。三児の母。7年前から続く長女の場面緘黙症との向き合い方、家族関係が自分の中の大きなテーマとなっており、今後の研究課題としても考えている。

ファイスト ワレーリヤ(Valeriya Fajst)

ファイスト ワレーリヤ(Valeriya Fajst)

Strategy planning & data analysis at Rakuten Mobile, Inc.

Born and raised in Russia, Novosibirsk, has lived in Japan since 2014. I did my bachelor’s and master’s degree in linguistics at UTokyo, graduating in 2021. After graduation I joined Rakuten Group as a new grad, and after 6 months of training got assigned to Transmission Network Strategy Planning division at Rakuten Mobile, Inc. My day-to-day job mainly consists of data analysis, and although I had very little prior experience in it I came to like it and am planning to advance my career in this field.

本日のキャリア教室では、2021年に東京大学にて社会言語学を専攻され、修士課程を卒業後、楽天グループに入社、現在は楽天モバイルにてネットワーク伝達に関する企業戦略とデータ解析に携わっている、ファイストワレーリヤ (Valeriya Fajst)様にご講演いただきました。

 今回の講演では、主にご自身のこれまでのキャリアについて、日本への留学の経緯や自身の学生生活を交えながら語ってくださいました。

 ワレーリヤさんはロシアの国内情勢に危機感を覚え、国外に出たいという強い思いを高校生の頃から持っていたそうです。また、日本のアニメなどが大好だったことから、日本語を学び、日本への留学をするようになったとのことでした。

2010年、モスクワの大会で日本語によるスピーチを披露して見事優勝し、2011年の夏、初めて日本への渡航の切符をつかみました。その数年後、様々な試験や面接を突破して、見事に東京大学への留学を果たしました。

 今回の講演の中で、ワレーリヤさんのボランティア活動への情熱が強く印象に残りました。様々な観点からドキュメンタリー映画を見ては、SNSを利用してボランティア活動へ参加していたそうです。大学内でも食堂のメニューにヴィーガンを取り入れるなど、積極的に行動を起こしていました。自分で行動を起こす大切さを学ぶことができました。

 この度は素晴らしい講演をありがとうございました。

伊藤竜星(総合文化研究科 修士課程)

堀井 有紀

堀井 有紀

家庭裁判所調査官

福井県出身。2004年3月東京大学文学部行動文化学科心理専修課程卒業。同年4月東京家庭裁判所採用。その後、静岡家庭裁判所沼津支部、神戸家庭裁判所、大阪家庭裁判所等、各地の家庭裁判所で勤務。非行をした少年や離婚等の家庭の問題で家庭裁判所に係属した当事者等について調査を行う家庭裁判所調査官として働く。3児の母であり、仕事と子育ての両立を目指す。公認心理師。

第3回となる今回は、家庭裁判所調査官である堀井有紀さんにご講演いただきました。堀井さんは本学文学部行動文化学科心理専修課程を卒業後、各地の家庭裁判所で勤務されています。心理職公務員としてのキャリアを積まれると同時に、3児の母親でもあり、講義では学生時代の話や調査官の業務についてだけでなく、仕事と子育ての両立についてもお話しいただきました。

家庭裁判所調査官の業務についてご説明された後、進学・進路選択についてご自身の体験をお話しされました。心理職公務員という道を選ぶにあたって、当時何を思っていたのかを披瀝する姿はどこか学生に寄り添うようでした。

その後は、仕事と子育てについて話されました。私が最も印象的だったのは、お子さんが病気にかかった時の日記を提示しながら、その体験を話されている姿です。その身振り、言葉からはやはり臨場感が伝わってきました。また、男女問わず自分ができる範囲で当事者意識として家庭にかかわることの大切さを強調する姿は非常に印象的でした。仕事も家庭も大切にされる堀井さんが、”等身大の女性”として自身の体験を話されることで、勇気づけられる学生が多くいたようです。

この講義は、多くの学生にとって、より広い視点から人生を考える契機になったように思います。スーパーウーマンだけではなく、”普通の人”が仕事と育児の両立を実現できる社会になってほしいという堀井さんの願いは、これから、ゆるやかに拡がりだしていくことになるのでしょう。

松本岳 (東京大学大学院 総合文化研究科 修士課程)

成田 明光

成田 明光

沖縄科学技術大学大学院 有機・炭素ナノ材料ユニット 准教授

2008年東京大学理学部化学科卒業。2010年、同大学院理学系研究科化学専攻修士課程修了後に渡独し、マックス・プランク高分子研究所にて有機化学の手法を利用したナノカーボン材料の合成研究に取り組む。欧州委員会による複数の多国間プロジェクトにも携わりつつ2014年に博士号を取得し、その後同研究所でプロジェクトリーダーとして研究を続ける。2018年より沖縄科学技術大学院大学での研究室立ち上げ準備を進め、2020年に帰国、現在に至る。

本日は沖縄科学技術大学院大学(OIST)にて有機・炭素ナノ材料ユニットを統轄されている准教授の成田明光先生にご講演いただきました。ご専門は、有機化学の手法を利用したナノカーボン材料の合成研究です。

成田先生は2010年、東京大学大学院理学系研究科化学専攻修士課程修了の後に渡独し、マックス・プランク高分子研究所にて博士号の学位を取得されました。学部生の頃より語学に興味がありドイツ語やフランス語を自主的に学んでいたことや、日本での学位取得に比べてより良い経済状況が望めることから、海外での博士号取得に踏み切られたそうです。

博士号取得の後も、多国間プロジェクトに多く携わりつつ同研究所でプロジェクトリーダーとして研究を続けられていました。そして2018年より、ドイツでの研究の傍らでOISTでの研究室立ち上げ準備を進め、2020年に帰国、現在は准教授としてユニットを統轄されています。

ご講演の中では、マックス・プランク研究所やOISTの概要・特長についてお話しいただき、これから大学院進学を将来の選択肢の1つとして検討するであろう多くの学生にとって、大変有意義なお話であったと思います。

また、実際に成田先生が今までに携わられた欧州委員会の多国間プロジェクトについてもご説明いただき、とても印象的でした。世界を舞台に活躍されている研究者の実態を目の当たりにし、私自身、国境を超えて世界を牽引する研究者像への憧れを覚えました。

学生も、普段あまり触れる機会のない研究分野や研究生活のお話に大変興味を惹かれている様子でした。研究に関してだけでなく、海外や沖縄での経験など、さまざまな新たな可能性を提示するご講演であったように思います。

成田先生、この度は貴重なお話をお聞かせいただきまして、誠にありがとうございました。

仲川久礼亜(総合文化研究科 博士課程)

𠮷田 覚

𠮷田 覚

元日本データパシフィック(株) 代表取締役社長

1948年 京都府生まれ。1972年京都大学農学部卒業。 13年間の総合商社勤務(安宅産業、伊藤忠商事)。その間、1980年から5年間、機械担当マネージャとしてシドニー駐在。 1985年、総合商社を退社して日本データパシフィック(株)設立。代表取締役に就任。e-Learningシステム、e-Learning教材を開発し、大学等の教育機関に販売。 2021年、日本データパシフィック(株)での役職を退任し、北海道 音威子府村で寒冷地におけるお茶の木の栽培に挑戦中。

本日のキャリア教室では、元日本データパシフィック株式会社代表取締役社長、吉田覚さんにご講演いただきました。吉田さんはこれまでの登壇者の方々の中で最年長の講師で、豊富なキャリア経験を話してくださいました。

吉田さんは、1972年に京都大学農学部林産工学科をご卒業され、総合商社の安宅産業に入社し国内部門の住宅事業部門の担当に就きました。その後、貿易部門の農業機械輸出入部門の単体機械の担当に異動しましたが、1977年の安宅産業との合併により、1980年から伊藤忠商事に勤務することになりました。5年ほどシドニー支店に駐在していたそうです。

1985年に伊藤忠商事を退社し、同年、ご自身で「日本データパシフィック株式会社」を起業しました。起業当初はパソコンのないパソコン関連会社で、初年度は給料も出せないほど赤字続きで大変な苦労をしたそうです。ですが、オーストラリアの会社の日本進出や、日本の会社のオーストラリア進出の手助けをする形でコンサルティングを受け持ちながら、その陰でパソコン市場を拡大させていき、1986年にオーストラリア大使館の紹介を受けてTypequick社の日本代表となってから、現在でも続く教育ソフトウェアやe-Learningシステムの自社開発、そしてe-Learning教材を開発・販売する企業にまで成長しました。現在の取引会社の中には、あのSoftbankもあるそうです。

今回のご講演では事業経営の難しさを、会社の起業に際しての心構えから、資金面・他社との競合・事業の継続・顧客からのクレームやトラブルの対応に至るまで、多方面にわたって丁寧に教えてくださいました。会社の起業という冒険心のみならず、多くの困難に直面しても諦めずに解決策を模索し続けた吉田さんの姿勢、そして企業経営に対する吉田さんの熱意を、分野は違いますが私も見習わなければならないと思いました。就職活動における企業の面接官側の意見まで聞けたので、本当に貴重な講演になりました。

この度はご講演いただき、大変ありがとうございました。

伊藤竜星(総合文化研究科 修士課程)

キャリア・ワークショップ

(実施:キャリアサポート室)

今回の授業では、本学キャリアサポート室のスタッフの方々にお越しいただき、学生自身が自分のキャリアを考えるためのワークショップを行いました。このワークショップの目的は、変化の激しい時代を生きていくために大切なことを理解し、今後の学生生活やキャリアを考えるきっかけにすることと、そのために重要な自分らしさとは何かを知ることです。

ますます不確実となる未来の中で、自分らしさを起点に新たな答えを創りだしていくことが重要であると考えられます。この「自分らしさ」とは、能力や動機、意味・価値に直結するものであり、これらの「自分らしさ」が今後のキャリアの創造に繋がっていくものであることは言うまでもありません。

最初に「自分らしさ」をみつけるためのワークを行いました。具体的には、これまでの人生を振り返るために、ライフラインチャートを作成し、これまでの人生における出来事について自分に問いかけました。そして、グラフに表れる自分の特徴を探りました。多くの学生にとって、人間関係や学業がその時代における”気持ち”の物差しになっているようでした。また、コロナ禍によって気持ちが沈んだという学生はやはり多かったようです。

次に、今後に向けて、磨きたいものを考えました。「社会人基礎力」(社会において多様な人々と共働するために必要な基礎的な力)のうち、自分が得意だと思う力や強化すべき力についてグループワークを通じて考えました。他人と話すことを通じて、新たな「自分らしさ」に気づく学生もいたようです。講師の方からは、社会人基礎力は、先天的に備わるものではなく、経験を通じて身に付くものであり、学生生活を通じて伸ばすことができるとの説明がありました。

授業の最後には、講師の方から、変化の激しい時代にはチャンスを自ら掴みに行く姿勢が大切だというお話がありました。自分のよりどころ、すなわち「自分らしさ」を探索し、それを明らかにするために、活動の目的や自分にとっての意味を考えるということです。

今回のワークショップに参加した一人ひとりが、多様な個性を持つことは何よりも明らかであり、また、それぞれの未来が言葉に到底尽くせぬほど複雑多岐にわたるものであることは容易に想像がつきます。彼らが、予測しがたい未来を主体的・積極的に生き、キャリア・人生を豊かにしていくためのヒントが、この授業にはたくさん込められていたと私は強く感じています。

 松本 岳(東京大学大学院総合文化研究科 修士課程)

ふりかえり

実施:キャリア教室担当教員

キャリア教室最終回では、これまでにゲストとしてお越しいただいた方々のお話の内容をふりかえるワークショップを行いました。

 まず、各回の記録を読みながら、ゲストがお話くださった内容と、その時に自分自身が感じたことや考えたことをそれぞれ思い出し、他の学生と共有しました。その上で、学生が自らの今後の「歩み」について考え、行動するきっかけにできればということで、同世代である学生同士で話したいテーマを考えました。一人ひとりが考え出した数多くのテーマの中からクラス全体で複数選び出し、5人程度のグループに分かれて意見交換を行いました。

選ばれたテーマは、キャリア選択をしていく上で何を基準にしていくか、自分の「幸せ」の定義、留学、東大にいる意味などです。

仕事を選ぶ際、やりたいことを優先すべきか、待遇や条件を優先すべきかということについて考えを述べあうグループ、自分自身にとっての「幸せ」がまだわからないので、将来何か問題が生じたときに自分がぶれてしまうのではないかと不安を共有し、今思う「幸せ」について考えるグループ、今大学で行っている学びが将来にどのように結びついているのかわからないという問題意識から、今学期習得した知識と思考力などの力についてふりかえって考えるグループなど・・・、テーマに沿いながらも自由に思考を巡らせ、自分自身の「将来」と「今」をつなげようとしていました。他の学生の意見に耳を傾けて、自分とは違う考え方に触れたことも大きな刺激になっていたようです。今後さらに思考と経験を重ね、自分の道を切り拓いていってくれることを担当教員一同、願っています。

髙橋 史子(東京大学教養学部附属教養教育高度化機構社会連携部門・特任講師)

スケジュール

第1回 10月7日(金) ガイダンス(オンライン)
第2回 10月14日(金)佐野 悠樹
   10月21日(金)休講(1月18日(水)に補講)
第3回 10月28日(金)堀井 有紀(ゲストはオンライン参加)
第4回 11月4日(金)ファイスト ワレーリヤ
第5回 11月11日(金)高祖 歩美
第6回 11月25日(金) 中村 有沙
第7回 12月2日(金)藤掛 直人
第8回 12月9日(金) キャリア・ワークショップ
第9回 12月16日(金) 𠮷田 覚
第10回 12月23日(金) 小見 和也
第11回 1月6日(金) 成田 明光
【補講】第12回 1月18日(水) 古川 千絵(ゲストはオンライン参加)
第13回 1月20日(金) 振り返り

2021A ゲスト講師略歴

石浦 章一

石浦 章一

東京大学名誉教授、新潟医療福祉大学特任教授、京都先端科学大学客員教授

1974年東京大学教養学部基礎科学科卒業。1979年東京大学理学系研究科相関理化学博士課程修了。理学博士、東京大学名誉教授。専門は分子生物学、生化学。東京大学大学院総合文化研究科教授等を経て、現在、新潟医療福祉大学特任教授、および京都先端科学大学客員教授。著書に『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』(羊土社)ほか多数。東大在籍時の2012年に、本授業の前身となる全学自由ゼミナール「進路を選ぶ10の方法」をスタートさせる。

東京大学名誉教授である石浦章一先生にご講演いただきました。石浦先生は、本授業の前身となる全学自由研究ゼミナール「進路を選ぶ10の方法」をスタートされた方でもいらっしゃいます。

今回の授業では、ご自身のこれまでのキャリア、そして、これまでに石浦先生が出会われたさまざまな学生の具体的なキャリアについてお話しくださいました。

石浦先生ご自身のキャリアについては、就職をされたはじめの年に5本もの査読論文を出され、そのことが後々のキャリアにつながったとのお話が印象的でした。質疑応答の時間には、論文をたくさん生産するための方法に関する質問にご回答いただき、院生としても大変勉強になりました。

また、これまでに石浦先生が出会われた学生の具体的なキャリアの選択に関するお話しについては、ユーモアを交えながら本当に多様なケースをご紹介いただき、受講生にとって、自分の将来について具体的にイメージする契機になったのではないかと思います。

根気強く実験を続けることで研究者としてのキャリアを切り開いたケース、研究では花開かなかったけれども別の道を生き生きと歩んでいるケースなどをご紹介くださり、たくさんの選択肢があるゆえに迷いを抱えることもある教養学部生にとって、とても勇気づけられるご講演だったと思います。

石浦先生、この度は誠にありがとうございました。

(寺澤さやか  教育学研究科比較教育社会学コース博士課程)

今津 知子

今津 知子

株式会社セールスフォース・ドットコム D&I Recruiting Manager、 国家資格キャリアコンサルタント

*ご都合により中止(休講)

1998年東京大学経済学部卒業。フードサービス、スポーツ製品メーカー、外資系生保、IT企業などで、人事、広報、マーケティングの領域を担当。2009年以降はDiversity&Inclusionを主軸に置いたキャリアを歩む。自身が転職を通じてキャリアを築いてきた経験もあり、自己理解・環境理解の大切さを痛感し、キャリアコンサルタントの資格を取得。働く女性や障害者、LGBTQ+当事者など、ビジネスにおいてマイノリティの立場にいる方々に寄り添い、彼らが生き生きと活躍できる環境実現を目指し、企業の中から社会の変革を推進する。

金子 敏哉

金子 敏哉

明治大学法学部教授

2002年に東京大学法学部を卒業。修士課程、日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て2009年1月に東京大学大学院法学政治学研究科博士課程を修了(博士(法学))。2009年4月より明治大学法学部専任講師、2014年10月より同准教授、2021年4月より同教授。専門は知的財産法。著作権侵害に対する刑事罰の適用の在り方、二次創作と著作権法の関係、知的財産権侵害による損害賠償額の算定等を研究テーマとする。

明治大学法学部教授の金子敏哉先生にご講演いただきました。金子先生は本学法学政治学研究科博士課程を修了後、明治大学法学部で専任講師、准教授を経て教授になられました。知的財産法を専門とし、著作権侵害や損害賠償を研究テーマとされています。

前半では先生ご自身の研究テーマ、著作権法についてクイズも交えつつお話をしていただきました。例えば他人の楽曲を文化祭で演奏するとき、無料の生演奏と無料の生配信とでは法律に「公衆送信は可能」と書いていない以上、後者は著作権の侵害になりうるというように、条文の細かい文言ひとことの重要性を解説していただきました。また、条文の解釈をめぐる問題でその事件において「最終的に決着をつけるのが裁判官」とおっしゃっており、今までは「法律のもと」で考えていると思っていた私の中の裁判官像が、「法律のもとで、法律に書いてないことを」考えているというようにガラリと変わりました。

 後半では大学教授のお仕事について、そして大学教員へのなり方や教授昇進のプロセスについて教えていただきました。大学や分野によってまちまちであると断られた上で、専任教員になることの難しさや専任教員であるからこそ任される仕事の多さなど、興味はあるものの自分の担当教員にはなかなか聞くことのできない大学教員のお仕事を垣間見ることのできるとても貴重なお話でした。
 そしてご講演の最後に、大学教員になるまでは大変だけど、自分でテーマを設定して研究することのできるとてもやりがいのあるお仕事であるととても楽しそうにおっしゃっていたことが印象的でした。

この度は興味深いご講演をどうもありがとうございました。
(大石和奈 総合文化研究科広域科学専攻 修士課程1年)

後藤 伸之

後藤 伸之

三井物産企業投資株式会社 代表取締役社長

1997年東京大学農学部卒業、1999年同大学院農学生命科学修士修了、同年三井物産入社。プラスチックの樹脂原料販売やリサイクルビジネスを経験後、2008年以降は主に企業投資や投資先の企業価値向上に従事。 商社の持つグローバルネットワークと、投資ファンドの持つ生産性改善力を組み合わせ、日本企業が抱える社会問題の解決を目指している。 2015年総合力推進部M&A推進室長、2019年企業投資部バイアウト事業室長を経て、2020年4月より現職。 1973年、大分県生まれ。

三井物産企業投資株式会社代表取締役社長の後藤伸之さんにご講演いただきました。後藤さんは本学大学院農学生命科学修士課程修了後、三井物産に入社され、イギリスやフランスでの海外勤務を経験されながら様々な分野でビジネスを展開されてきました。

規定のルートがあるわけでも、また、確固たる見通しを持って将来の選択をできているわけでもなく、関心の蓄積で辿り着いた目の前の研究と不確かな将来を考えると靄の中を進んでいるようで私は不安でした。けれども後藤さんのお話しから、その最中には繋がりも目的もないように思える経験でも、後から振り返ればその点と点はつながっていくので、今ここで懸命にベストを尽くすことが大事なのかもしれないと思いました。例えば後藤さんは、当時は「行き当たりばったり」で進路を選択し研究に取り組んだけれども、仕事で投資先を研究する際には当時の経験や知識が役に立っているというお話をされました。

また、企業投資を行う現職の経験から、民間企業で社会課題に取り組む意義や、その具体的なプロセスをお話いただきました。注目する起業家の紹介やこれまで行った事業を共有されながら、日常生活の中から社会課題を見つけ解決していくビジネスのエッセンスを後藤さんはご教示されました。赤裸々に事業での失敗や課題、そして具体的な職務や働き方を説明いただくことで、単に会社や職種を選ぶことを超えて、働くこと自体の意味やライフワークバランスの取り方を考えるヒントを学ぶことができました。

この度はご講演いただき、ありがとうございました。

(長江侑紀 教育学研究科比較教育社会学コース博士課程 4 年)

城口 洋平

城口 洋平

ENECHANGE株式会社 代表取締役CEO

2010年東京大学法学部卒業。東日本大震災を機にエネルギー問題への関心を深め、理系最高峰の英ケンブリッジ大学工学部修士・博士課程に進学し、電力データAI解析に関する研究を行う。同大学での研究成果をもとにENECHANGE(エネチェンジ)株式会社を2015年に起業し、2020年エネルギーテック企業として初めての東証マザーズ上場を実現。ロンドン在住、経済同友会、経産省エネルギー各種委員会に参画。

本日は、2010年に東京大学法学部をご卒業され、現在は、テクノロジーを使って脱炭素社会の実現を目指すENECHANGE(エネチェンジ)株式会社のCEOを務めておられる城口洋平様にご自身のキャリアについてご講演いただきました。

同社は、2020年エネルギーテック企業として初めて東証マザーズ上場を果たし、城口さんはイギリスに暮らしながら経済同友会、経産省エネルギー各種委員会に参画するなど、日本だけでなく世界にも大きなインパクトを与えておられます。

城口さんは、学部生の頃に進学振り分けで法学部に進学されましたが、その後エネルギー問題に関心を持つようになり、可能な限り理系科目を受講されました。卒業後、2年間働かれたのち、世界一周の旅を経て理系最高峰であるイギリスのケンブリッジ大学に進学されました。そして2015年に、電力データAI解析に関する同大学での研究成果をもとに、ENECHANGEを設立されました。

城口さんが若くして成功を収められた背景には、イギリスへの留学前に立てた10年計画がありました。城口さんは、5W1Hをもとに、自分が(WHO)今から10年後に(WHEN)自分らしくいたいから(WHY)エネルギー分野で(WHAT)経営者として(HOW)世界で(WHERE)活躍するという計画を立て、それを着実に遂行されました。それから10年が経った今、城口さんは次の10年計画の実現に向けてすでに動き始めておられます。

また、大学院での研究を経てから起業された城口さんは、「(大学卒業前の)若いうちに起業したほうがよい」という声もあるが、自分の専門性を充分に高めてからでも遅くない、むしろその方が社会を巨視的に見て、これから重要になるテーマを見つけられるとおっしゃいました。

私自身も現在博士後期課程に在籍しており、今から何かを始めるのは遅いかな…と思っていたのですが、城口さんのご講演を拝聴し、私も10年計画を立てて色々と挑戦してみようかなと思います。本日はありがとうございました。

(ヨシイ オリバレス ラファエラ 教育学研究科博士後期課程3年)

子安 ゆかり

子安 ゆかり

武蔵野音楽大学講師、ピアニスト

武蔵野音楽大学ピアノ科卒業。歌曲伴奏に魅せられ留学、ドイツ国立ケルン音楽大学大学院歌曲演奏法科修了。演奏活動に加え、ケルン音楽大学講師、国際コンクール公式伴奏者など歴任。詩と音楽が人生をかけるテーマとなり、音楽活動と並行してドイツ国立ケルン総合大学で、ドイツ学、音楽学、日本学を専攻。帰国後は武蔵野音楽大学講師の傍ら東京大学大学院総合文化研究科で研究継続。博士(学術)。現在も音楽活動と研究活動の二足の草鞋を履く。

本日の講義は、ドイツ・リートという、ドイツのクラシック音楽の歌曲を専門とし、アンサンブルピアニストで研究者でもある、子安ゆかり先生に講演いただきました。キャリア教室では初めて音楽が流されるなど、いつもとは一味違った授業でした。 

日本でドイツ・リートに出会い、「これだ!」と感じた子安先生。日本でやれることを極めた結果、おのずとドイツに留学する道を見つけたそうです。ドイツに留学され、日本に帰国した現在も、日本とドイツの2つのフィールドで活躍していらっしゃいます。留学したことで。専門性の深化という主目的はもちろん、世界から日本を見る立場になってはじめて、これまで想像つかなかったような人や出来事と出会った経験を得たそうです。特に、お互いに何物にもなっていないときに出会った友人は一生の財産とおっしゃいました。

子安先生の授業では、1つのことを掘り下げていくからこそ広がっていくこともある、というメッセージが強調されました。子安さんが専門とするドイツ・リートは歌とピアノの総合芸術であり、研究も文学、詩、音楽、言語など様々な分野を横断するものです。一見、子安先生はマルチスキルを磨いた人にも思えます。しかし、子安先生はむしろこれだと思ったものを深堀りした結果、マルチスキルが身に付いたと話されました。人生で大切なのは、「つらくても一歩先を見たい」と思える何かであり、それを見つけたら信じて突き進むやり方があるということを経験に基づいてお話しいただきました。

本日の授業は、学生たちのこれからの指針となると思います。この度はご講演いただき、ありがとうございました。

(新小田成美 教育学研究科修士課程2年)

塩満 典子

塩満 典子

文部科学省 科学技術・学術政策研究所上席フェロー

1984年3月 東京大学理学部生物学科卒 、1990年6月ハーバード・ケネディ行政大学院公共政策学修士(MPP)。1984年4月科学技術庁入庁、内閣府男女共同参画局参事官・調査課長、お茶の水女子大学教授・学長特別補佐、科学技術振興機構・科学技術システム改革推進室長、宇宙航空研究開発機構・ 航空技術部門事業推進部次長などを経て2021年4月より現職。著書に『研究資金獲得法の最前線』(学文社、2019年)ほか。

本日の講演者は、塩満典子さんでした。塩満さんは、東京大学理学部生物学科を卒業した後、科学技術庁に入庁されました。その後、国家公務員としてのキャリアを積まれる中で、人事院留学でハーバード・ケネディ行政大学院公共政策学修士(MPP)を取得されるとともに、内閣府男女共同参画局参事官・調査課長や科学技術振興機構・科学技術システム改革推進室長、宇宙航空研究開発機構・ 航空技術部門事業推進部次長などをご経験されています。また、奈良先端科学技術大学院大学教授、お茶の水女子大学教授・学長特別補佐の出向経験もお持ちです。

ご講演では、主にご自身の国家公務員としてのキャリアをご説明された後、これからの社会のイノベーションに必要なことについてご教示いただきました。そして最後に、男女共同参画社会に向けて、特に理系の女子学生の支援やその指針についてお話しいただきました。印象的だったのは、様々な次元の情報が活発に影響し合う「総合知」の実現に向けて尽力されている点で、今後学生が社会で活躍するうえで重要な方針となるのではないかと思います。

塩満さんのご経験には自分の将来を重ね合わせる学生も多く、質疑応答の時間では多くの質問が学生から寄せられました。特に多かったのは国家公務員の総合職がいかに激務であるかについての質問でした。塩満さんは、メディアなどで取り上げられたことで自分の時代に比べて状況はかなり改善されたということや、今後も改善されていくだろうという明るい見通しを回答されました。その上で、実際には一般的に公務員としてイメージされるものとは異なる職務や働き方も選ぶことができるため、その時その時で戦略的に選択してほしいと説明されていました。
 
この度はご講演いただき、ありがとうございました。

(新小田成美 教育学研究科比較教育社会学コース修士 2 年)

陶山 祐司

陶山 祐司

Zebras and Company 共同創業者/代表取締役

社会課題解決と事業成長を両立させ、短期的な時価総額向上よりも長期的な価値創出を行う「ゼブラ企業」の推進に取り組む。元々は経産省でエネルギー・電機産業政策を担当。その後、VCとして、100億超の資金調達をした宇宙開発ベンチャー等の事業開発を支援。2018年に独立し、SIIFにおけるインパクト投資の促進や、持続可能なまちづくりに従事。2021年にZebras and Companyを共同創業。

本日は Zebras and Company 共同創業者/代表取締役である陶山祐司さんにご講演いただきました。陶山さんは、東京大学文学部をご卒業後、経済産業省での勤務を経て、現在は独立・起業をされ、「ゼブラ企業」を推進されています。

100 枚を超えるスライドをご準備くださっていた陶山さん。ご講演の前半では、大学時代の野球部やバックパッカーのご経験から、なぜ経済産業省を就職先として選んだのか、なぜ経済産業省を退職されて起業されるに至ったのかについて、詳しくお話くださいました。

そして、前半のご講演の後、「ここまでの話の 8 割はフィクションです」という驚きのスライドが映し出されます。続けて、「嘘は一つもないけれど、こんなに綺麗なストーリーなわけがない」というお話とともに映し出された陶山さんの日記。ご自身の迷いや葛藤が綴られている日記を拝見し、「こんなに率直に思いを表現されているノートを見せていただいていいのだろうか」と思うと同時に、「いつまでも迷いや葛藤を抱え続けていいんだ」と力づけていただいた気がしました。

「綺麗なストーリー」からはこぼれ落ちてしまうお話も含め、ユーモアも交えながらエネルギッシュなご講演をいただき、受講生からは「キャリアについて、もっと自由に考えていいんだと思った」という声も上がりました。

ご講演の冒頭、「学生の皆さんにとって、今日の話が『きっかけのきっかけ』くらいになったらいいと思う」とのお話がありましたが、多くの学生にとって、より幅広い観点からキャリアについて捉え直すきっかけになったと思います。

この度はご講演いただき、誠にありがとうございました。
(寺澤さやか 教育学研究科比較教育社会学コース博士課程 4 年)

新納 麻理佳

大手監査法人ESG統合報告書アドバイザリー

2002年東京大学教養学部卒。 同年株式会社ハースト婦人画報社入社。 雑誌「25ans」編集部にてファッション・カルチャー・インタビューなどを担当するほか、2010年「25ans オンライン」を立ち上げる。 2012年退社後、ソーシャルエンタープライズにてプロデューサー兼執行役員として社会課題をクリエイティブに解決するビジネスを展開。 2017年以降ダイバーシティコンサルティング会社にて事業開発本部マネージャーとして全事業の運営を担い、2019年に取締役に就任。 2020年より大手監査法人にてESG統合報告書アドバイザリーを担当し、企業のESG経営を支援。 また、2020年度より東京大学教養学部にて全学自由研究ゼミナール「ソーシャルビジネスをデザインする~課題発見と解決のアイディア創出へ」を担当。

大手監査法人でESG統合報告アドバイザリーとして働いていらっしゃる新納(にいろ)麻理佳さんにご講演していただきました。新納さんは教養学部を卒業後、雑誌編集、社会課題を解決するソーシャルビジネス、ダイバーシティコンサルティングなどを経て現在の大手監査法人に転職されたそうです。 

ご講演の前半では現在のESG統合報告アドバイザリーのお仕事について教えていただきました。昨今取り沙汰されるようになったSDGsは、企業のみならず投資家の投資の仕方にも影響を与えます。SDGsに取り組んでいる企業に対して投資を行うことをESG(Environment, Social, Governance)投資といいます。「企業は投資してもらうためにSDGsに配慮し、投資家はESG投資をする」このサイクルを回すことを促進することが新納さんのお仕事だとおっしゃっていました。正直今までは、SDGsはただ企業が環境を保護していることをアピールするための指標だと思っていたのですが、投資家が絡むビジネス的な側面もあると知り、興味深かったです。 

後半は新納さんご自身のキャリアについてでした。新納さんは一見関連のない分野への転職をされてきているように見えましたが一貫して、「やりたい領域で、スキルを発展させることができる職場」への転職をされてきました。そして組織内でのご自身のポジションも一貫していて、経営者や事業リーダーを支える立場や、0から1を生み出す新規サービス開発を得意分野として継続していらしたそうです。感情をガソリンにしながら、本当に好きと思えるものを突き詰める。そしてスキルを磨き、自分なりの美学を持つ。最後のまとめでおっしゃっていたこれらの言葉は、現在進路について考えている私にはとても印象的な言葉でした。

この度はためになるご講演ありがとうございました。

(大石和奈 総合文化研究科広域科学専攻 修士課程1年)

吉田 直人

吉田 直人

一般財団法人日本気象協会 気象予報士

石川県金沢市出身。大学在学中に気象予報士の資格を取り、2011年に東京大学教養学部広域科学科卒業後、一般財団法人日本気象協会へ入社。はじめは、予測部門に所属し、道路会社や港湾・船舶系会社への日々の気象予測情報提供を行う。入社7年目からは交通部門へ異動し、道路会社への気象情報提供の業務責任者として、業務管理や気象コンサルティングを実施。また、いずれの部署でも継続的に予測精度向上や作業効率化を担当している。

本日は一般財団法人日本気象協会の交通部門にて、道路会社への気象情報提供の業務責任者として業務管理や気象コンサルティングを実施されている吉田直人様にご自身のキャリアについてご講演いただきました。

吉田さんは雨の日が多いことで知られる石川県のご出身で、幼い頃から「今日傘を持っていくべきか自分でわかったらいいのになぁ」という考えから天気に関心を持つようになられたとのことでした。 高校生の時に、ご自身が好きなアーティストが気象予報士の資格を持っているという情報を耳にしたことをきっかけに気象予報士を意識するようになられたそうです。 大学時代は気象予報士の資格試験に向けて勉強する傍ら、 化学の先生になることにもご関心をお持ちだったことから、教職科目も受講されていました。 3 回の不合格を経て気象予報士の資格試験に合格され、当時は、女性のお天気キャスターが多かった中、吉田さんは「お天気のお兄さん」になることを目指して第一志望だった日本気象協会に就職されました。

しかし、入社直後にその夢が叶うことはないという事実を知らされたそうです。それでも、吉田さんは「自分が選んだ道」という決意のもと、幼い頃から独学で習得されたプログラミングの知識なども活かしながら、現在は、予測精度向上や作業効率といった分野でご活躍されています。

予報した天気が当たらなかった時や、災害のニュースを見て無力感を感じられることもあるそうですが、これからも「(今後起きうる)マイナスを0にする」仕事にやりがいを見つけていきたいとおっしゃっていたのがとても印象的でした。私も研究者として、十分に自分の研究成果を社会に還元できず葛藤を抱えていたのですが、吉田さんのご講演を拝聴し、これからも研究に尽力しようと思いました。ご講演ありがとうございました。

(ヨシイ オリバレス ラファエラ 教育学研究科 博士後期課程3年)

吉田 ゆり

吉田 ゆり

がんと働く応援団 代表理事、国家検定キャリアコンサルティング技能士2級、国家資格第一種衛生管理者・両立支援コーディネーター、メンタルヘルスマネジメント2種

81年生まれ、東京都出身。千葉大学文学部行動科学科社会学卒業。15歳で単身留学したカナダでキャリアカウンセリングと出会う。企業と人がWinWinになれる環境を作りたいと大学卒業後、複数社で人事として採用育成に携わる。2児の母になった際育児と仕事の両立の壁に直面し独立し、2018年9月にキャリアコンサルティング事務所を立ち上げる。2018年秋(37歳)に卵巣がんが発覚し、手術。現在は、ホルモン治療中。がんになった事で初めて「がん=死ではない」事に気がつき、がん経験者の継続就労を支援する活動を団体を設立し始める。既婚、2児の母&義母の生活介助者

本日は、がんと働く応援団代表理事の吉田ゆり先生にご講演いただきました。

ご講演は、私たちががんについて知る理由から始まりました。3割が現役世代で発症することや、女性に多いがんは30代~40代がピークであること、自分や周りの人ががんと判明した時に「がんショック」と呼ばれる精神的に揺さぶられた状態に陥ることを教えていただき、がんを正しく知ることで人生を守ってほしいというメッセージを受け取りました。

 次に、吉田先生のキャリアについてお話しいただきました。もともと体を壊すほどまで働くことにあまり疑問を持つことのない日本社会への違和感があった吉田先生は、カナダへの留学を期に、キャリアカウンセリングを日本に持ち込みたいと感じられました。日本に戻ってからは人事の仕事に従事しますが、いつの間にか自分自身が問題視していた働き方に陥ってしまい、ワークライフバランスの取れない生活になっていたといいます。しかし、家族ができたことによって、これまでの働き方では両立は難しいと気づいたそうです。その後、両立のため独立した矢先にがんが見つかります。自分ががんになった事で初めて「がん=死ではない」ことに気づき、現在はがん経験者の就労継続の支援活動を行っているそうです。

最後に、人生が「うまくいかない」ことについてお話しいただきました。学生たちはどうしても時とともに右肩上がりの「うまくいく」人生だけを想像しますが、実際の人生にはジェットコースターのように紆余曲折があります。例えば、学生たちが想定していないこととして、職場でよく発生する傷病であり、時には退職理由にもなる「うつ病」と「腰痛」を例に挙げられました。では、うまくいかなかったらどうすればいいのか。吉田先生は「うまくいかない」ことを人に話すことが必要だとお話されました。人と対話することで、自分の現状を正しく把握し、認知のゆがみから抜け出す事が出来る。自分の目標・使命を探すことが「うまくいかない状況」でも次のアクションを起こす原動力を得る方法だといいます。大切なのは完璧にすることではなく、最も大事なことを取り逃さないことなのです。

今回のご講義では「うまくいない」ことがあった時人生をどう立て直すかについてのお話が特に印象的でした。人生の「偶発性」についてはこれまでの授業でもたびたび紹介されましたが、それからどうするのかまでお話されたことで、学生に「自分ならどうするのか」と考えさせる授業であったと思います。

吉田先生には貴重なご講演をしていただきました。ありがとうございました。

(新小田 成美 教育学研究科修士課程2年)

Winnie Hsu

Winnie Hsu

ジャーナリスト/ノースウェスタン大学メディア・ジャーナリズム・スクール修士課程

Winnie Hsu graduated from UTokyo in 2017 with a major in environmental sciences and a minor in cognitive behavioral sciences. Upon graduation, she worked full-time at L.E.K. Consulting, a global strategy consulting firm for 4 years. She has been a part-time travel reporter at NHKWORLD since college. On weekends, she also works as a producer / reporter for Asian Boss, a Youtube channel with 3M followers, doing street interviews and documentaries. Over the summer, she worked for the BBC covering the Olympics. Currently, she is a master’s student at Northwestern University Medill School of Journalism, specializing in Video & Broadcast. 2017年東京大学卒業(環境科学専攻、認知行動科学副専攻)。グローバル戦略コンサルティングファームであるL.E.K.コンサルティングに4年間正社員として勤務。大学時代からNHKWORLDで非常勤の旅行記者を務める。週末は、フォロワー数300万人のAsian BossというYoutubeチャンネルでプロデューサー兼レポーターとして街頭インタビューやドキュメンタリーを担当している。また、夏にはBBCでオリンピックの取材に携わり、現在はノースウェスタン大学メディア・ジャーナリズム・スクールの修士課程に在籍し、ビデオと放送を専門としている。

Hsu様は、東京大学教養学部英語コース(PEAK)の環境科学専攻を2017年に卒業後、L.E.K.コンサルティングで4年間勤務されました。大学時代からNHKWORLDで旅番組のリポーターを務めたり、Youtubeチャンネルで街頭インタビューやドキュメンタリー作成をしたりなど、ジャーナリズム活動を続けられてきました。更なるキャリアアップを目指して、現在はノースウェスタン大学メディア・ジャーナリズム・スクールの修士課程に在籍し、ビデオと放送を専門に勉学に励まれています。大学在学中の受講生に近い目線から、やりたいことをやってみよう!と励ますような口調でHsuさんはお話をされました。

What are you going to do with your life?という質問で講演を始めたHsuさんは、東大在学中の活動と就労機会の関係や、仕事の中で経験された内容と現在の専攻の接続など、それぞれのライフイベントを鮮やかに繋げていきながら、キャリア形成のエッセンスをご教示されました。キャリアは事前に用意されているわけでも、直線的に形成されるわけでもありません。Hsuさんのジャーナリズムへの強い興味関心と機会を掴もうとする努力によって、NHKWORLDの学生レポーターという新しいポジションを作り出した過程は、積極的に好きなことに取り組むことで開かれる道があることを、身をもって示された例だと思います。 

ただし、後半では、そうした個人のやる気を削ぎ、開いていたはずの道を閉ざすような社会的課題も提起されました。東大におけるジェンダー比の偏りから、女子学生に対するバイアスや社会的抑圧が働いていないかを再考する必要があることをHsuさんは訴えました。この段階ではこれをしているべき、この状況ではこうすることが望ましい、そうした規範に従うことで安定した社会的地位を達成できると考える社会で育った私は、今でも「あなたは何がしたいの?」という質問が最も苦手な質問です。いつでも変わっていい、変化を受け入れていこう、そのHsuさんの言葉に背中を押されながら、少しずつ変わっていこうと私は思いました。ご講演ありがとうございました。

(長江侑紀 教育学研究科博士後期課程4年)

キャリア・ワークショップ

(実施:キャリアサポート室)

今回の授業では、キャリアサポート室の方にお越しいただき、自己分析を他者と共有し、フィードバックを受け合うことで、自己理解を深めていくワークを行いました。

まず、変化の激しい時代を生きる学生たちは、計画を立てて目標を達成すると同時に、状況に対して柔軟に対応したキャリア形成が必要であると説明されました。その中で、「自分らしさ」という軸をもってキャリアを考えることができるようになることが、本日の授業の目的です。

授業では2回のグループワークが行われました。まず、自分の人生をプラスの時とマイナスの時で波のように繋いだ図をシェアしあいました。学生たちの気づきの中では、「環境・人間関係の変化に伴うグラフの変化が多い」、「東大合格がトップで、そのあとイメージとのギャップで下降する」、「コロナの影響で休校になった時期に気持ちが落ち込んでいた」などの意見が多くみられました。他の人のワークを見て、思いがけない点でプラスやマイナスになることに新鮮さを感じたようで、話が弾んでいきました。

次に、学校・サークル活動、家族、自分のポリシーなどの経験を通じて持つようになった自分の得意・不得意な社会人基礎力について、シェアしあいました。各々の独自体験が、学生たちには刺激になっているようでした。グループワークの後、社会人基礎力は経験によって鍛えたり、新たに開発したりできることが説明され、何をどう開発できるか個人で考えた後、みんなで一斉にシェアしました。新たに獲得したい基礎力として多く挙げられたのは、「前に踏み出す力」でした。

本日の授業によって、学生たちはゲスト講師の方々お話しを一層深く理解することができるようになったかと思います。キャリアサポート室のみなさま、ありがとうございました。

(新小田成美 教育学研究科比較教育社会学コース修士 2 年)

スケジュール

第1回 10月8日(金) ガイダンス
第2回 10月15日(金)後藤 伸之
第3回 10月22日(金)陶山 祐司
第4回 10月29日(金)金子 敏哉
第5回 11月5日(金)塩満 典子
第6回 11月12日(金)吉田 直人
第7回 11月19日(金)

キャリア・ワークショップ(実施:キャリアサポート室)

第8回 12月3日(金)休講(1月21日(金)に補講)
第9回 12月10日(金) 子安 ゆかり
第10回 12月17日(金) 新納 麻理佳
第11回 12月24日(金) 吉田 ゆり
第12回 1月7日(金) Winnie Hsu
第13回 1月18日(火) 石浦 章一
【補講】第14回 1月21日(金) 城口 洋平

2020A ゲスト講師略歴・講演概要

今津 知子

アクサ生命保険株式会社 カルチャー&ダイバーシティ マネージャー

1998年東京大学経済学部経済学科卒業。新卒でフードサービス会社に就職。現場を1年経験後、教育・採用業務に従事。その後スポーツメーカーでは、マーケティング・広報と社内教育を担当。外資系生保で、ダイバーシティ推進業務をほぼゼロから立ち上げ。その後広報業務を経験後、2019年にアクサに転職、現在に至る。22年の社会人生活の中で、仕事ではかけがえのない出会いや経験を積み、子育てや親の介護からもまた多くを学んでいる。

本日はアクサ生命保険株式会社でカルチャー&ダイバーシティ マネージャーを務めていらっしゃいます、今津知子さんにご講演いただきました。

 ご講演では、キャリア形成理論の1つとして「4L」の枠組み(労働 Labor、 学習 Learning、 余暇 Leisure、 愛 Love)をご紹介いただき、ご自身のこれまでのキャリアにおいてこの4つの要素が占める割合を時系列に沿ってご紹介いただきました。そのうえで、この4要素のバランスが良いことが理想であるわけではなく、その時々の自分のライフスタイルにマッチする働き方が正解であるとお話しされました。また、新卒で入社した会社で学びたいことを学べたら次のステップに進むために転職するのか、同じ会社で働き続けるのかの選択もその人の価値観次第であるとおっしゃており、キャリアは自分自身がその時大事にしたい価値観で決めるものなのだということを強く感じました。

 また私生活の面では、特に介護や育児は自分で時間をコントロールできないという点で大変ですが、こうした面に関してはある程度割り切って対処することも必要であるともおっしゃっており、こうした姿勢こそが仕事と私生活を両立させるカギであるとも感じました。

 多くの経験をされてきた今津さんのお話は大変興味深く、広い視点で自分の現在のキャリアや生活を捉えることの大切さを感じました。この度はご講演いただき、ありがとうございました。

(総合文化研究科 修士1年 吉野真理子)

大澤 辰夫

ボーズ・オートモーティブ合同会社 Executive Operating Officer

1980年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、日産自動車に入社。開発部門で、振動、騒音、ハンドリング、乗り心地等、車両走行性能を担当。1998年商品企画部門に異動し、チーフプロダクトスペシャリストとして、北米向けフルサイズピックアップ、SUV、日本向けフーガ、スカイライン、シーマ、高級チャンネルのインフィニティ車種全般の企画を行う。2011年ボーズ・オートモーティブに転職し、現在に至る。

本日はボーズ・オートモーティブ合同会社でExecutive Operating Officerを務められている大澤辰夫さんにご講演頂きました。ご講演では、今まで経験された職務それぞれについての内容ややりがいをお話しいただきました。

大澤さんは1980年、東京大学大学院工学系研究科(航空工学専攻)修士課程を修了後に日産自動車に入社され、開発部門で主に振動や騒音を軽減する技術開発に携わってこられました。その後、日産のアメリカ進出に際して、4年間立ち上げメンバーとして幅広い開発業務を担当されたそうです。1998年には商品開発部門に異動され、チーフプロダクトスペシャリスト(CPS)として、様々な車種の企画をされてきました。商品開発業務については、ターゲットとなる顧客の調査に始まり、実寸大のモデルの作成に至るまで、その業務内容について段階を追って具体的にお話しいただき、学生にとっては将来の仕事を想像する上で大変有用で興味深い内容であったと思います。大澤さんは、ご自身が担当されたCPSの仕事は自動車開発業務の中で一番楽しく達成感のある職種だと仰っていたのが印象的でした。2011年には日産自動車と技術面での連携も多かったボーズ・オートモーティブ合同会社に転職され、これまでの経験を生かしつつExecutive Operating Officerとして様々なオーディオ技術に関わっておられるそうです。

ご自身がされてきた職務について活き活きとお話されている大澤さんの様子を拝見し、私自身将来自分の経歴を振り返った時に、大澤さんのように堂々と自分のやってきたことについて語れるような人間になりたいと思いました。

(総合文化研究科 修士1年 仲川久礼亜)

葛西 周

早稲田大学高等研究所 講師

2005年桐朋学園大学作曲理論学科卒業。2007年東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程、2010年博士課程修了。博士(音楽学)。同大学助手および12の大学・研究機関で非常勤講師・研究員を務め、語学、初年次教育、一般教養から卒論指導や大学院ゼミまで多様な科目を担当してきた。2020年4月より現職。専門は日本の近現代音楽史で、特に音楽体験の場の変遷に関心があり、最近は温泉地における音楽実践について研究している。

本日は早稲田大学高等研究所で講師をされている葛西周さんにご講演いただきました。葛西さんは日本の近現代音楽史をご専門とされています。学生である私自身、身近な存在である研究者のお話は大変興味深いものでした。

 研究者というと一般的には、自分の好きなこと追い続けてそれにより生計を立てていける職業、という印象を持たれることが多いと思います。しかし研究者である葛西さんが語られたことは、研究のモチベーションは「好きなこと」だけではない上、研究により「生計を立てる」ことは決して一筋縄にいくものではない、というシビアな実態でした。

 講演では「アカデミア・サバイバル入門」というテーマのもとで研究者としての困難とその対処について率直なお話をたくさんしていただき、研究者は決して楽な道ではないということを痛感しました。しかしだからこそ、音楽そして研究者の道を今まで貫いて来られた葛西さんのお話のうちには自分の仕事に対する誇りを窺い知ることができ、私自身研究者への敬意や憧れを改めて強く抱きました。

講演の締めくくりには学生に対して「自分のキャッチコピーをじぶんで作ること」を提案されました。色々な人に広く興味を持ってもらえるような自分に関するキャッチコピーを提示すると、それがコミュニケーションのきっかけになるということです。大学教員としての指導の役割は一方向的な知識の供給ではなく、議論を促し双方の考えをブラッシュアップさせることにあると仰っており、コミュニケーションの大切さについて語られていた点が印象的でした。

(総合文化研究科 修士1年 仲川久礼亜)

神代 康幸

財務省関税局関税課 課長補佐

福岡県出身。京都大学・同大学院を経て、2013年財務省入省。 入省後、大臣官房総合政策課に所属し、マクロ経済分析を担当。2015年には東北財務局にて、金融検査や災害復旧業務に従事。 その後、大臣官房秘書課でのG7仙台会合事務局や金融庁(出向)における金融行政を通じ、国際的な経験を積む。 留学では仏・エコールポリテクニークにて経済やデータ分析を専攻、帰国後は財務省関税局で関税率の検討等、関税政策の企画・立案に取り組む。

第2回となる今回は、財務省関税局関税課課長補佐の神代康幸さんを講師としてお招きし、中高生時代の進路選択・大学時代のキャリアの選択・財務省での業務を中心にお話いただきました。たくさん悩みながらもたくましく生き方を決めていくエピソードの数々に、私も勇気をもらえるような60分でした。

 キャリア選択について「限られた状況や選択肢で、その都度決める」という言葉が特に印象に残りました。講義では、中高生時代・大学受験・就職といった場面で、限られた選択肢で最善の選択を行い、人生を広げていった様子を紹介いただきました。キャリア選択について「周囲の環境は不可抗力で変わってしまうので、キャリアは考えていても答えがない」という言葉は、遠い未来を想像しながらキャリアを考えてしまいがちな学生に新たな気づきを与えていたように思えました。私も博士号取得後のキャリアについて思い悩むことがありますが、まだ見ぬ将来に悩み過ぎる必要はないのだなと、気楽になることができました。同時に、だからこそ目の前のことに注力しようと気持ちが引き締まりました。

 講義では神代さんの仕事観についても伺うことができました。財務省では比較的短いスパンで役職が変更になり、扱ってきた業務は多岐に渡るものの、それらの業務は裏でつながっているという話が印象に残りました。「同じような仕事をやっていればプロフェッショナルというわけではない」という言葉は、スペシャリスト・ゼネラリストを目指すそれぞれの学生にとって、専門性について考える良い機会になると感じました。  講義の終盤には、今の学生が努力すべきこと3点(勉強すること・地味でも着実に成果をあげること・できればグローバルに行動すること)を端的に示して頂きました。講義の内容ともつながりが深く、きっと多くの学生が記憶に残していることかと思います。

(学際情報学府 博士1年 今泉拓)

讃井 康智

ライフイズテック株式会社 取締役

1983年、福岡市生まれ。久留米大学附設中高卒。東京大学教育学部卒業後、株式会社リンクアンドモチベーションに勤務。その後、独立し、東京大学大学院 教育学研究科に進学し、故三宅なほみ先生に師事。各地の教育委員会・小学校・保育園などで創造的で協調的な21世紀型の学びを実現するサポートを行う。ライフイズテックには立ち上げ時から参画。自治体・学校・企業向け事業担当役員。NewsPicksプロピッカー(教育領域)。

今回はライフイズテック株式会社取締役の讃井康智さんにご講演いただきました。讃井さんは本学教育学部をご卒業後、人材コンサルティング会社に勤務され、その後大学院で研究を再開される傍らライフイズテック株式会社の設立に関わられました。会社ではITに興味を持つ中高生にプログラミングを学ぶ機会を提供するキャンプを毎年開催され、現在はプログラミングをオンラインで学べる教材も開発、提供されています。

ご講演の中で、ご自身のキャリアには日本の教育を変えたいという思いが常にあると伺いました。地域による教育の格差を解決する手段としてITを活用するという事業目的はまさに讃井さんの原体験に基づくものであり、こうしたお話から「意志が事業を創る」「理想の未来は創れる」というお言葉が非常に生き生きと迫ってきました。一方で讃井さんはお仕事をされるなかで現場視察も大事にされているそうで、ITはあくまで課題解決の手段であるというお考えも強く伝わってきました。この考え方は、キャリアを考える場合にとどまらず、ポストコロナ時代を生きる私たちの今後の生活における普遍的なテーマになりうると感じました。

さらに、行った先の偶然がキャリアを形成する、というお話も非常に興味深く、「偶然」を獲得するためにも、興味を持ったことに自分から進んでアプローチしていくことの大切さを改めて感じました。この度はご講演いただき、ありがとうございました。

(総合文化研究科 修士1年 吉野真理子)

髙橋 哲也

キリンホールディングス株式会社 経営企画部DX戦略推進室

2006年、東京大学総合文化研究科修了。分析化学の研究室を修了しながらも、文系の採用枠でキリンビールに入社。営業を4年勤めた後、社内公募制度でマーケティングリサーチを担当する部署に異動し、9年間マーケティング周りのデータ分析を担当する。この春より新設された現部署に異動し、様々なデジタル技術の業務活用支援を行っている。

本日は株式会社キリンホールディングスの髙橋哲也さんにご講演いただきました。

髙橋さんは今年から社内で新設の部署に異動になり、デジタルトランスフォーメーションに関するお仕事をなされています。現在の部署に移るまでは営業のサポートや商品開発に関するデータ分析などのマーケティングリサーチのお仕事を9年ほどなさっていたそうです。

本日は「わからないことだらけの世の中で、どうすればいいか?」というテーマに沿って講演をしてくださりました。

髙橋さんは元々文科三類で東京大学に入学されたのち、バイオテクノロジーとの「偶然の出会い」により科学の道に進まれたそうです。また、現在のキリンホールディングスさんへの就職を決意されたのも、ちょっとした出来事によりお酒に対する考えが180度転換したことがきっかけだったそうです。「偶然」に直面しやすい生活を意識的にすることで、面白い巡り合わせがあると言われます。

個人のキャリアの8割は予期しない偶発的なことによって決定されるとも言われる不確実な世の中では、「自分を拡げること」に力と時間を費やすべきだと髙橋さんは仰います。その中でも、自分には無い何かを持っている人との関係の大切さを主張されていました。実際に何よりも不確実なものは人との巡り合わせなので、だからこそ、リモート化が進み「偶然」の出会いを作り出しにくい昨今の状況においては、その状況をしっかりと認識し、巡り合わせを生むにはどうしたら良いかを積極的に模索していくことが必要なのだということを痛感しました。

(総合文化研究科 修士1年 仲川久礼亜)

徐 世傑

有限会社 メカノトランスフォーマ 代表取締役

マレーシア出身。2005年東京大学大学院精密機械工学専攻修士課程修了。大学学部2年生頃から矢野健(現会長)と(有)電子精機(現(有)メカノトランスフォーマ)の設立に関わり、2005年に入社。2012年メカノトランスフォーマ社の代表取締役に就任。アクチュエータ技術を梃子に、「人づくり」「新技術づくり」「モノづくり」「サービス」を通じて、日本と世界を結んでいくことも大きな目標の一つ。日本と世界の成長の一翼を担える会社を目指す。

 本日は有限会社メカノトランスフォーマ代表取締役の徐世傑さんにご講演いただきました。講演では、徐さんの進路選択だけでなく人生哲学についても深く伺うことができました。特に、人間関係に関する処世術やお金の価値観についてなど、普段の学生生活からは知ることができないトピックも多くお話いただき、大変有意義な時間となりました。

 好きなことで仕事を選ぶか、求められることで仕事を選ぶか、という話題は多くの受講生の印象に残ったかと思います。好きなことで仕事を選んだ場合は、大変な努力と時間が必要とされるものの、苦に思うことが少ないこと。一方、求められる仕事を選んだ場合は、早い段階で事業が軌道にのり、儲けがでることも多いこと。ただ、どちらが正解ということもなく、好きなことから求められることへ(またはその逆へ)変更する人もいること、などをご教授いただきました。好きなことをできる仕事を選ぶか、儲かる仕事を選ぶか、というのは多くの学部生にとって共通の悩みだと思います。私自身も博士号取得後の進路に悩んでいますが、正解はないという言葉に勇気づけられ、自分なりに精一杯頑張ろうという気持ちになりました。

 講演で一番心に残った言葉に「(人生は)人間力を修行するジム」というものがあります。何か上手くいかないことがあったときや理不尽に直面した時に、それを自分を鍛える場だと思え、という趣旨です。好きなことを選び、多くの苦労を経験された徐さんだからこそ、この言葉に大変な説得力を感じました。上手くいかないときは落ち込んでしまいがちですが、それを跳ね返す強い気持ちの大切さを痛感しました。この言葉は、受講生にも大きく響いたかと思います。この度はご講演いただき、大変ありがとうございました。

(学際情報学府 博士1年 今泉拓)

中村 有沙

株式会社オアシススタイルウェア 代表取締役

2011年東京大学経済学部卒業。在学中は「学生のためのビジネスコンテストKING運営委員会」に所属。新卒で水道工事業を手がける株式会社オアシスソリューションに入社。売上全国1位を取るなど営業職として4年間活躍後、人事部を立ち上げる。人事部在籍中、自社の制服リニューアルを担当したことがきっかけで、スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を考案。2017年ワークウェアスーツ販売のため株式会社オアシススタイルウェアを立ち上げ、代表取締役に就任。プライベートでは第一子を出産し、現在育児休業中。

今回は株式会社オアシススタイルウェア代表取締役の中村有沙様にお越しいただき、これまでのキャリアや将来を考えるにあたってのヒントについてご講演いただきました。

 中村さんは2011年に本学経済学部をご卒業後、水道事業を行うベンチャー企業、株式会社オアシスソリューションに入社され、内気な自分を変えたいという思いからまずは営業職としてご活躍されます。その中で、社内研修制度の効率化等の必要性を感じられ、4年目に社長に直談判し、ご自身が中心になって社内に人事部を立ち上げられます。そこで若手の採用に苦労する現状を打開する為に会社の第一印象を変える必要性を実感され、「スーツにみえる作業着」ワークウェアスーツを2年かけて開発されました。この作業着が好評を呼び、今では550社以上の企業に採用されています。

 ご講演では在学時の挫折についてもお話くださり、そうしたご自身の経験から、将来の方向性に迷った時は、まずは飛び込んでみるべきだと仰いました。また社会には新しいものを「作る」人と、既存のシステムを「守る」人の二種類が存在しますが、そのうち自分はどちらになりたいのかを考えることも有益だとのお話もされました。その上で、仕事を選ぶ際には、向き不向きを考えるよりもやりたいことをやるべきだとお話しいただきました。ご講演を聴いて、順風満帆なキャリアを歩まれている様に見える中村さんでも、実は悩まれることも多かったという点が意外に感じられたと同時に、能動的に動くことの重要性にも気付かされました。またご提示頂いた進路選択に当っての3つのヒントは、受講生の将来への良き指針になったと思います。この度はご講演いただきありがとうございました。

(総合文化研究科 修士1年 吉野真理子)

堀部 直人

株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン ビジネスプラットフォーム部マネージャー

2002年東京大学入学。 日本学術振興会特別研究員(DC1)として進化生物学の研究を行う。副専攻として科学技術インタープリター養成プログラムを修める。前期課程と合わせ9年間を駒場ですごし2011年博士課程修了(学術)。株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンというビジネス書の出版社で働き始める。書店営業、システム開発などを経て編集部へ。ビジネス書を編集する傍らビッグクエスチョンズシリーズやあかちゃん学絵本シリーズを手掛ける。2020年より編集部を離れDX推進にかかわる。

本日は株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンの堀部直人さんにご講演いただきました。講演では、進路選択の過程、博士課程での体験、出版業界での業務についてお話いただきました。今回は学生間のディスカッションを積極的に設け、学生の不安や疑問に対して、堀部さんが回答し話題を広げていくという形式で行いました。堀部さんは博士号取得後に就職するというキャリアを選んだ方で、私も一人の博士課程学生として大変参考になる内容でした。

 進路選択や出版業務などの各話題において、堀部さんが自身の専門や強みを柔軟に捉えている点が非常に印象的でした。例えば、興味のある専門が複数あるから、幅広く学べる教養学部の後期課程に進学したこと。例えば、副専攻である科学技術インタープリターを活かして就職したこと。また例えば、就職先でも流通・編集・人事と様々な領域を担当してきたこと。自身の専門領域内に固執せずに、専門と進路や業務との間にうまく接点を作っていく姿勢は、ぜひ見習いたいと感じました。堀部さんがご自身の柔軟な生き方について、油滴がふらふらと動く様子に重ね合わせながら表現していた点もとても印象的でした。博士課程について具体的にイメージしづらい前期課程の学生にとっても、柔軟な生き方がマルチステージな人生において重要なこと、遠くの目標に向かって逆算で進路選択することだけが全てでないことが伝わっていたと思います。

 講演の最後に頂いた『フラフラ博士課程に行くのもいい』という言葉を書き記し、今回の記録にしたいと思います。

(学際情報学府 博士1年 今泉拓)

宗京 裕美子

Sake Suki 創業者 社長

福井県生まれ。金沢大学附属高校出身。2008年東京大学文学部社会学専修課程卒業。ゴールドマンサックス証券グローバルマーケッツ部門入社。2011年米国野村證券に転職し、米ニューヨーク移住。勤務期間にColumbia University SIPAの修士号取得。日本の地酒を米国に広めたいと清酒輸入会社Sake Sukiを2013年に創業。現在米国主要都市含む15州、1000店舗のハイエンドレストラン等に卸す。私生活では、アメリカ人の旦那と4歳と2歳の娘、マルチーズとニューヨークで暮らす。

本日は清酒輸入会社Sake Sukiの創業者であり社長をお務めの宗京裕美子さんにご講演いただきました。2013年創業のSake Sukiは、日本の地酒を米国に広めるべく、現在米国主要都市を含む15州、約1000店舗のハイエンドレストラン等に日本酒を卸しています。 講演では今までに経験されたキャリアとその経緯についてお話しいただきました。

宗京さんは大学生時代、メディア業界に興味を持ちテレビ局でのインターンなどを数多く経験されました。就職活動に際しては今一度自己分析をした結果、外資金融の道を志しゴールドマン・サックス証券へ入社されました。その後4年間のキャリアの中で、国際的な視点から、日本で働くことへの限界を感じるようになり米国野村證券へ転職、海外生活を始められたということです。アメリカではグローバルスタンダードを身につけたいという想いからコロンビア大学大学院(SIPA)へ通い修士号の取得もされています。現職であるSake Sukiは、大学院生時代に金融業の傍ら趣味感覚で始められたものでしたが、より自分のバックグラウンドや強みを活かせる道として、その経営を本業に選択されたそうです。

宗京さんは今までの経歴を振り返り、様々な経験や人脈を培ってきたことがそれ以降のキャリアを築く上で活きていて、その結果としてある今の生活が今の自分に一番合っていて幸せだとおっしゃっていました。

あまり苦労を語られない宗京さんでしたが、その時々の目標達成に向けて人一倍努力をされ、またそれぞれの局面における課題に柔軟に対応してきたからこそ、次につながる経験を築かれることになったのだろうと感じました。

(総合文化研究科 修士1年 仲川久礼亜)

安井 則恵

野村不動産株式会社 住宅事業本部事業推進一部 専門職

大学を卒業後、メーカーの住宅事業部(分社化し旭化成ホームズ株式会社)に配属。住宅の設計やインテリアの提案業務を行う。その後、ディベロッパー((株)大京)に転職し、営業推進部、商品企画部・高額チームでマンションの企画・推進業務、モデルルームのデザイン、高額物件のオーダーメイド対応などを行う。その後、アメリカに渡り、Interior and Landscape を専攻し、日本に帰国。その後、ディベロッパー(東京建物株式会社)を経て、現職、野村不動産株式会社でマンションの仕様決めやインテリア業務を行う。

今回は野村不動産株式会社住宅事業部にお勤めでいらっしゃいます安井則恵さんにご講演いただきました。安井さんはこれまで住宅の内部に関わるお仕事を続けてこられ、キャリアの途中ではアメリカ留学も経験されています。ご講演では、主に現在関わられているお仕事の具体的な内容や、ご自身のキャリア選択に関してお話しいただきました。

安井さんが現在手掛けておられるマンションの内装については、扱うマンションそれぞれのコンセプトに合わせて、住む人が使いやすい内装を材質から細かく決定していくとのことでした。決めなくてはいけないことがたくさんある一方で、一から空間を作り上げる楽しみがあるというお言葉が印象的でした。

またキャリア選択については、ご自身の経験にもとづいた女性として働くことについての考えや、学生のうちにやっておくべきことなどについてお話しいただきました。女性が長く働ける会社であるかどうかを見極める一つの指針として、女性の管理職がどの程度いるかを見るという点を挙げていただきました。またアルバイトや留学を通して、さまざまな世界があることを知るべきだともアドバイスされました。私も留学を通して視野がとても広がった経験があるので、お話にとても共感できました。

ご講演で詳しく仕事内容を紹介していただいたことで、今まで知らなかった仕事を知ることができた学生がたくさんいたと思います。この度はご講演ありがとうございました。

(総合文化研究科 修士1年 吉野真理子)

キャリア・ワークショップ

(実施:キャリアサポート室)

今回は東京大学キャリアサポート室の方々にワークショップを開いていただき、キャリアを考えるにあたっての様々なワークを実践しました。

最初に、これからの進路選択を行うにあたって認識しておくべき「自分らしさ」を知るために、モチベーショングラフを用いて、これまでの人生の中でうまくいっている時とつらい時それぞれの共通点を探りました。多くの受講者にとって、目標が達成できているか、人間関係がうまくいっているかが判断基準の一つになっているようでした。一方で、環境の変化にすぐ適応できる人と、なかなか新しい環境に飛び込めない人とにタイプが分かれるという意見も多くありました。また、オンライン授業によって人と会えないことで気持ちが沈んだという声が多かったのは印象的でした。

 次に、学生時代における「頑張りどころ」を考えるために、まず「なりたい自分」になるために今後、強化すべき力は何かを各々考えました。大学受験の経験などから、計画力や実行力に強みを感じている人が多かった一方で、主体性が足りていないと感じている人も多くいたようです。また、自分に足りない力を伸ばすために、東大だからこそ得られる出会いを大切にしたいという声も上がりました。これに関連して、講師の方から”Planned Happenstance”(キャリアの大部分は偶然によって形成される)というお話をいただきましたが、この言葉は今までの授業でも度々話題に上っており、改めて自分から人間関係を作りに行くことの大切さを感じました。

 (総合文化研究科 修士1年 吉野真理子)

スケジュール

第1回 9月25日(金) ガイダンス
第2回 10月2日(金)中村 有沙(株式会社オアシススタイルウェア 代表取締役)
第3回 10月9日(金)神代 康幸(財務省関税局関税課 課長補佐)
第4回 10月16日(金)髙橋 哲也(キリンホールディングス株式会社 経営企画部DX戦略推進室)
第5回 10月23日(金) 大澤 辰夫(ボーズ・オートモーティブ合同会社 Executive Operating Officer)
第6回 10月30日(金)讃井 康智(ライフイズテック株式会社 取締役)
第7回 11月6日(金)

キャリア・ワークショップ(実施:キャリアサポート室)

第8回 11月13日(金) 宗京 裕美子( Sake Suki 創業者 社長)
第9回 11月27日(金) 堀部 直人(株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン ビジネスプラットフォーム部マネージャー)
第10回 12月4日(金)徐 世傑(有限会社 メカノトランスフォーマ 代表取締役)
第11回 12月11日(金) 葛西 周(早稲田大学高等研究所 講師)
第12回 12月18日(金) 今津 知子(アクサ生命保険株式会社 カルチャー&ダイバーシティ マネージャー)
第13回 12月25日(金)安井 則江(野村不動産株式会社 住宅事業本部事業推進一部 専門職)
自由参加 
1月8日(金) 
本授業の振り返り・自分自身の将来を考えるワークショップ(レポート作成にむけて)

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