2023年度Sセメスター水曜5限
近年はデジタル化が進み、目まぐるしく新商品・サービスが生まれています。大企業だからといって、必ずヒット商品・サービスが生まれるわけではありません。特に新規事業については、実際にやってみないと成功するかわからないこともありアクセンチュアの調査によると、立ち上げに成功したと躊躇なく言える経営幹部はわずか6%にとどまっています。
不確実な世界は、どんどん加速していきます。そのような世界で、成功している製品・サービスの多くは「最初はその価値に気が付かず、気がついたら手放せなくなる」という特徴があります。
例えば、皆さんが使用しているLINE。スマートフォン普及以前の時代は、携帯メールで連絡することが当たり前で、LINEが出てきたときは、多くの人は携帯のメールを使えばよいと考えていました。しかし、LINEは件名を記載せずに本文を打てて、スタンプで自分の気持ちを伝えるなど、気軽なやり取りができます。また当時は電話による通話が一般的で、電話料金を気にしながら話していましたが、今は多くの人はLINEの無料通話を活用しています。
最初はそれほどイノベーションだと思わなかったのに、気づいたらLINEがなかった時代にはもう戻れないと、多くの人が感じるでしょう。
そのような手放せなくなる新商品・サービスを生み出すためには、素早く試すことが重要です。具体的には、顧客のニーズを捉えて描いた“こうありたい”というビジョンをもとに、トライアル商品・サービスを素早く市場に投入し、市場の反応をタイムリーに商品・サービスに反映します。
私たちアクセンチュアは、世界有数の総合コンサルティング企業として、世界中の様々な企業と一緒に、新しいサービスをビジネスとして実現させてきました。その経験と実績を活かし、本授業では、初学者を対象に、アクセンチュアの現役コンサルタントと共に、商品・サービスを育てるプロセスを身に付けることを目的としています。
同世代の価値観やインサイト(潜在的な欲求)をインプットに、デザインシンキングという手法で“今ほしい未来”の新しいアイデアを生み出し・精査して、そのアイデアをもとに簡易プロトタイプ(検証のためのサービス・もの)を作成・検証します。そして最終発表では、ストーリーテリング(ビジネスを「物語」を通して表現する手法)を活用して、実際の企業の方へプレゼンします。
*2022年Aセメスターの授業(調査編)では、電車移動の時間のストレス・退屈さや、日常の悩み相談のハードルが高いといった大学生の生活に近い領域について、同世代の価値観やインサイトを調査しました。
*本講義のプログラムは、構想編の授業からでも履修できるようにプログラムを構成しています。デザインシンキング、ストーリーテリング等の手法を学びながら進めますので、初学者の方も安心して履修してください。
「私たちが今ほしい未来は何か?」という正解がない「問い」に対して、CX(顧客体験)、ビジネス、テクノロジーなどの視点から磨きをかけ、自分なりの解をみつける技術を学ぶことで、不確実な世の中も楽しめるようになる
最適なトライアル版を素早く作り、評価を的確に分析・反映する手法を学び、実践する
ストーリーテリングをもとに人を説得する技術を学び、発表する
回 | 日 | 内容 |
1 | 4/5 | ガイダンス 忍びよる価値:手放せなくなるサービスはどう作られるのか ゼミに関する説明(ゼミの目的と目標、進め方、スケジュール、評価方法) |
調査編の示唆を基にしたアイデア立案
2 | 4/19 | 同世代の価値観を考える 調査編講義で明らかとなった示唆の振り返り |
3 | 4/26 | 今ほしい未来の仮説を考える① デザインシンキング講義・演習 |
4 | 5/10 | 今ほしい未来の仮説を考える② デザインシンキング演習 |
業界エキスパートへのアイデア発表・インタビュー
5 | 5/17 | 発表の準備をする① ストーリーテリング演習 |
6 | 5/24 | 発表の準備をする② 資料作成/プレゼンテーション演習 |
7 | 5/31 | インタビューを設計する インタビュー設計演習 |
8 | 6/7 | インタビューをする アクセンチュアの業界エキスパートへのヒアリング |
アイデアのブラッシュアップ
9 | 6/14 | 今ほしい未来の仮説を考える③ インタビューを踏まえた仮説更新 |
簡易プロトタイプによるアイデア検証
10 | 6/21 | 簡易プロトタイプの作成① プロトタイプ作成演習 |
11 | 6/28 | 簡易プロトタイプの作成② プロトタイプ作成演習 |
企業の方への最終発表
12 | 7/5 | 発表の準備をする③ 最終発表準備 |
13 | 7/12 | 発表(発表10分、フィードバック10分程度) 受講者数により授業時間を延長する可能性あり |
◎振り返りフォーム(70%)
…各回で学んだ知識、概念、理論に関する簡単な復習。疑問点や感想も書いてください。
◎発表(30%)
…第13回授業で発表を行います。教員(10%)、アクセンチュア社員(10%)、受講者(10%)で評価を行います。
評価基準は以下の通りです。
評価基準
準備への貢献(各チーム担当のアクセンチュア社員が評価)
・チームワークへの貢献:授業の中でチームメンバと交流し、チームワークの向上に寄与する。
また、チームにとって有益と思える内容は、積極的にフィードバックを行うことができる。
・アイデア出しへの貢献:多様な視点を持って活動に参画し、自分のアイデアを話すことができる。
また他者からの意見を取り込むことで、アイデアを進化させることができる。
・アウトプットへの貢献:グループワークに順応するとともに、
新たな、または不慣れなタスクにも積極的に取り組むことができる。
また、与えられたパートのタスクについて期日を守ってこなすことができる。
発表への貢献(教員、アクセンチュア社員、受講者が評価)
・内容のわかりやすさ:ストーリーテリングの手法で、伝えたいことを簡潔にわかりやすく話すことができる。
・話し方の適切さ:聞き手を意識して、はっきりした発音で話すことができる。
また発表時間を大幅に超えないようにコントロールできる。
・質疑応答のわかりやすさ:質問者の意図を理解して、受け答えができる。
質問内容がわからない場合は、質問者に質問して内容を確認することができる。
・講義前半でチーム編成し、その後はチームでの作業が中心となりますので、
体調不良などのやむを得ない事情による欠席を除き、すべての回に出席してください。
・ゼミの内容は、リサーチ・インタビュー/アイディエーションについての初学者向けのため、事前の関連知識は特に必要ありませんが、グループワークへの積極的な参加が求められます。
・インタビューやプレゼンテーションを実施する講義の前には、その準備を宿題とします。また、講義時間内に課題が終わらなかった場合も、終わらなかった範囲を宿題とする可能性があります。
・20名程度(1-2年生が主対象、3-4年生も若干名参加可能です)
・履修を検討している方は4/5のガイダンスに必ず出席してください。
ガイダンス終了後、履修希望の方はアンケートに記入していただきます。
・希望者が20名を大きく上回る場合には、アンケート内容をもとに選抜する可能性があります。
履修者の決定は4/14(金)までにメールにてお知らせします。
アクセンチュア株式会社
髙橋史子
(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)
takahashi[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp([at]を@に書き換えてください)
総合文化研究科 准教授 髙橋 史子