キャリア教室2・A集中
Report 01
授業レポート第1弾は、第3期NECプロジェクトについてです。「参加企業/官公庁さまから見た本授業とは?」ということで、NEC様に以下授業レポートを執筆いただきました。
プロジェクト実施: 2017年2月14日・17日
レポート公開: 2017年4月13日
Text by NEC
東京大学の前期課程1・2年生を対象とした「教養学部生のためのキャリア教室2」社会連携プロジェクトは、大学生が企業や官公庁勤務する社会人と2日間かけてミッションに取り組む、産学連携の短期集中型プロジェクト授業です。
このキャリア教室2の中で実施される複数プロジェクトの一つとして、NECは昨年度の第1期に引き続き「ICT社会に新たな価値を。」というタイトルで、ICT(情報通信技術)を活用した新い社会ソリューションを皆で作り出すワークショップを行いました。
昨年度は顔認証やドローンなど、 NECの最先端技術が活用された世界を描きました。今年度の活動は「ICTを活用したユニバーサルデザインの街づくり」をテーマとしたフィールドワークやディスカッションです。
教室に集まった 12 名の大学生を、7 名の NEC 社員が迎えました。「この人たちは、どんな人たちだろう?」と言いたげな表情です。とくに車いすを利用する社員や、盲導犬を連れた社員が来ていることに驚いた様子です。
定刻となり、本授業の担当教員である標葉(しねは)先生のご挨拶で、2日間にわたるプロジェクトの1日目がスタート。
まずは私たちのこと を知ってもらわなくはいけません。
「今日はバレンタイデー!予定の時刻には終わりますから安心してね!」と大学生をリラックスさせてから、NECの事業や2020年に向けた取り組みを紹介しました。そう、この日は2月14日だったのです 。
少し雰囲気がほぐれてきたところで、本日のフィールドワークの説明に入りました。「ICTを活用したユニバーサルデザインの街づくり」を考えるため、車いす利用者の上原、盲導犬利用者の川嶋とキャンパスを歩き、障害者の立場でグッド・ポイントとバッド・ポイントを発見しよう、というもの。
上原と川嶋には、書籍とコーヒーを買ってくるという「お使いごと」が言い渡されました。
2つのグループに分かれた大学生は、車いす利用者の上原、盲導犬利用者の川嶋とともに、フィールドワークに繰り出しました。目指すのはキャンパス内にある書店とカフェです。上原は、順調に書店までたどり着いたものの、指定の書籍が見つけられません。店員に尋ねると、書棚の高いところに陳列されていました。
いっぽう川嶋は、慎重に歩みを進めていきます。点字ブロックが大事な道しるべです。
「どっちに曲がって、どのくらい進みますか?」川嶋が尋ねます。大学生は苦心しつつ、できるだけ分かりやすい説明をしようと努力していました。
大学生のサポートもあって、上原も川嶋も無事、書籍とコーヒーを購入できました。ところが、買った物で片手がふさがってしまうと、車いすや盲導犬を操るのが難しそう。
「そうか…。」大学生は教室への帰り道にも、新たな気づきを得たようです。
教室に戻った大学生は、各々が気づいた点を付箋に書きこみました。どう整理して発表すれば良いのか、あちこちでディスカッションも始まっています。NEC社員も、アドバイスをしたり、話し合いに加わったりしていました。
いよいよ発表の時間です。「車いすでは自動ドアが開きにくい」、「盲導犬が店内に入ると皆が何となく気にする」といった気づきの発見に加え、「点字ブロックは、視覚障がい者には必要なのに、車いす利用者にとっては不便なデコボコでしかない。どうすればいいのか」といった問題提起もなされました。
各グループが発表を終えた後、講評を兼ねて上原がまとめを行いました。
「実は私、アイススレッジホッケーでバンクーバーパラリンピックに出場し、銀メダルをもらいました。」と自己紹介すると、大学生から驚きの声が上がります。
続いて上原は「今日、みなさんが気づいたように、100%のバリアフリーは存在しません。でも声かけや、ちょっとした気づかいで助けられる障がい者はたくさんいます。」と説明。「2020年に向けて、おもてなしや優しい人が溢れる日本に」と訴え、1日目を締めくくりました。
Day1の翌日、4名の学生にNECのショールームをご案内しました。
この日ご紹介したのは、立ち止まらずに顔認証ができる「ウォークスルー顔認証システム」や、投影された画像をスワイプすればスマホに取り込むことができる「インタラクティブ・プロジェクション」など、数々の最先端技術です。
各学生がこうした技術を興味深く見学する様子には、NEC社員のひとりとして晴れがましい思いを抱きました。
プロジェクトの2日目は2月17日に行われ、13名の学生が集まりました。
参加者の入れ替わりもあったため、前回の内容を説明する学生の姿も。
「学生が社会人の生の姿を知って将来を考える」という、このプロジェクト本来の目的にのっとり、ひとりのNEC社員による自己紹介からスタートです。
さまざまな新規事業に携わった経験を話した上で、「大事なのは、対象をしっかり観察して自分の意見をまとめ、それをもとに他人と深い議論をすること。」と学生にアドバイスしました。
この日、学生に行ってもらうのは、1日目のフィールドワークで得た気づきをもととしたディスカッションとプレゼンテーションです。
今回のテーマである「ICTを活用したユニバーサルデザインの街づくり」を実現するため、解決しなければならない真の課題は何か。この課題が解決されている未来の社会はどうなっているのか。
学生はこの課題をディスカッションし、「未来の新聞記事」という形でまとめることを求められました。しかもプレゼンテーションでは、その内容を分かりやすく伝える寸劇も行わなければいけません。
学生は3つのチームに分かれ、それぞれにNEC社員も加わりました。
「進撃の銀ちゃん」、「ガラケー」、「イノベーター」と個性的なチーム名が付けられ、プレゼンテーションへの期待もふくらみます。
ディスカッション行い、プレゼンテーションの内容をまとめるために与えられたのは、わずか2時間。チーム名と同じく、時間の使い方も個性的でした。
まずスケジュールや役割の割り振りを決めるチームもあれば、いきなり自分の考えてきたことを語りだすメンバーがいるチームもあります。
視覚障がい者の課題を掘り下げるため、盲導犬利用者の川嶋にインタビューするチームがあるかと思えば、自ら目をつぶってトイレに行ってみたチームもありました。
議論が白熱し、なかなか準備が整わないチームがあったため、予定より30分遅れてプレゼンテーションがスタートしました。
「最初はチーム「進撃の銀ちゃん」。創作した新聞記事のタイトルは「iRing」。
「iRing」が、周囲の状況をセンシングして視覚障がい者に伝えるイアリング型のおしゃれなアイテムということをプレゼンテーションしました。全員参加での寸劇もなかなかのできです。
このアイテムは「点字ブロックは視覚障がい者には大事だが、車いす利用者には邪魔」という気づきから考案したそうです。
続いてチーム「ガラケー」。タイトルは「ICTに頼らぬ街をICTで創る~人助けシステムヘルポチ~」。
これはヘルプボタンが押されたとき、近くの人が助けに行くシステムです。さらに表情や動作を解析し、困っているかどうかを検出する機能もあるというプレゼンテーションしました。
この発表には盲導犬利用者の川嶋から「困っていないということも伝えたい」とコメント、学生は大きくうなずいていました。
最後はチーム「イノベーター」。タイトルは「障がい者を“助けない”社会へ」。
「“健常者が障がい者を助ける”のではなく、お互いが補い合うという発想で考えるべき」という想いが熱く語られ、聴いていた参加者からは、感心のため息が漏れていました。
川嶋も「停電のとき、自分は健常者を誘導できる」というコメント、プロジェクトの最後にふさわしい納得感に包まれました。
締めくくりは、参加者全員で内容が良かったチーム、プレゼンが良かったチームにそれぞれ投票しました。各チームの得票数は13票、12票、11票と並びましたが、僅差で「進撃の銀ちゃん」の優勝となりました。
学生からは「新しい視点が得られた」「良い刺激になった」という感想をいただいた一方、「新たなビジネスアイディアが浮かんだ」と言い出すNEC社員も出てくるなど、お互いに学び合う、良いプロジェクトにすることができたと思います。
参加した学生のみなさま、標葉先生、岡本先生に改めて感謝を申し上げます。