東京大学教養学部全学自由研究ゼミナール
2022年度Aセメスター
担当者:髙橋 史子
金曜2限
日本政府は正式に”移民”を受け入れると発表していません。しかし、国際的には新しい居住国に住んで1年以上の者を「移民(migrants)」と呼ぶことが多く、OECD加盟国のなかで外国人流入数において4位である日本は(OECD, 2017)、実質上の「移民受け入れ国」と言っても過言ではないでしょう。2019年春から、単純労働分野への外国人受け入れが拡大され、国内の少子高齢化とあいまって、外国人の定住化や滞在の長期化が進んでおり、日本社会の多民族化・多文化化*は進んでいるといえます。
民族・人種・文化に関係なく、平等に社会に参加するために教育は重要な役割を果たします。この授業では、多文化社会という観点から、家庭、学校、地域、労働市場などさまざまな場で行われる教育という営みをとらえなおし、移民の子どもたち・若者の生活世界や教育格差の現状に対する理解を深めていきます。さらに、マジョリティにとって「当たり前」となっている特権性に対して気づき、理解を深めることを目指します。
*ただし、日本の多文化社会化は今に始まったことではありません。もともと、日本社会にはアイヌや部落などの人々、さらに在日コリアンなど、さまざまな民族的・文化的背景を持つ人々が生活してきました。
キーワード
移民、教育、多文化社会、マイノリティ、特権性
<授業前>
・指定文献を読み、オンラインテストで内容を確認した上で出席してください。
<授業>
・補足説明の後、ディスカッションやワークなどを通じて、各回のテーマについて理解をさらに深め、議論をしていきます。
<授業後>
・授業中に議論した内容をふりかえり、気づいたことや考えたことを提出してください。(ふりかえりフォームの提出)。
・自分が書いたもののコピーはメールで受信できますので、記録としてとっておいてください。
・ふりかえりフォームは「匿名化して共有可」部分と「共有不可」部分にわけて書いていただきます。「匿名化して共有可」部分は、毎週slackで共有します。「ふりかえり・まとめ」の回では、共有されたふりかえりフォームの内容を読んだ上で、議論をさらに深めていきます。
第1回(10/7)
ガイダンス
・ゼミの目的と目標、進め方、スケジュール、評価方法など
イントロダクション
第2回(10/14)
日本社会の多文化化
・オールドカマー
・ニューカマー
・海外帰国者
・留学生
誰を「日本人」とみているのか―国際比較でみる日本のナショナル・アイデンティティ
<事前課題>
教科書1〜4章
第3回(10/21)
移動する子ども・若者の生活世界(1)
・家庭
・学校
<事前課題>
教科書5〜6章
第4回(10/28)
教育格差の実態とメカニズム
<事前課題>
松岡亮二「教育は階層社会の現実から切り離せない」 中村高康・松岡亮二(編著)『現場で使える教育社会学 教職のための「教育格差」入門』ミネルヴァ書房 2021年 pp.41-63.
第5回(11/4)
多文化社会と教育格差
<事前課題>
髙橋史子「日本の学校も多文化社会の中にある」 中村高康・松岡亮二(編著)『現場で使える教育社会学 教職のための「教育格差」入門』ミネルヴァ書房 2021年 pp.232-249.
第6回(11/11)
多文化共生と日本の教育―施策、学校実践
<事前課題>
教科書12〜13章
第7回(11/25)
ふりかえり・まとめ(1)
<事前課題>
第1〜6回のふりかえりフォーム共有部分を読んできてください。
第8回(12/2)
移動する子ども・若者の生活世界(2)
・地域
・労働市場
<事前課題>
教科書7〜8章
第9回(12/9)
移動する子ども・若者の生活世界(3)
・トランスナショナルな生活世界
<事前課題>
教科書9章
第10回(12/16)
オルタナティブな教育
・外国人学校
・夜間学校、NPO
<事前課題>
教科書14〜15章
第11回(12/23)
特権性―マジョリティ・マイノリティ
<事前課題>
・出口真紀子 (監訳)『真のダイバーシティをめざして—特権に無自覚なマジョリティのための社会的公正教育』上智大学出版 2017年(Diane J. Goodman’s book “Promoting Diversity and Social Justice: Educating Members of Privileged Groups” 2011, 2nd edition)
・松尾知明. (2005). 「特定課題研究 「ホワイトネス研究」 と 「日本人性」–異文化間教育研究への新しい視座」『異文化間教育』 (22), 15-26.
第12回(1/6)
国際比較
・アメリカの多文化教育
・移民の社会統合に関する国際比較
<事前課題>
教科書11章
第13回(1/20)
ふりかえり・まとめ(2)
<事前課題>
第7〜12回のふりかえりフォームの共有部分を読んできてください。
額賀美紗子・芝野淳一・三浦綾希子編. (2019).『移民から教育を考える―子どもたちをとりまくグローバル時代の課題―』ナカニシヤ出版, ISBN:978-4-7795-1369-5
・オンラインチェック(30%)
指定文献を読み、内容を確認するためのものです。授業の前に受けてから出席してください。
・ふりかえりフォーム(60%)
各回の内容について、気づいたこと、疑問に思ったこと、議論を通じて考えたことなどを書いてください。
・授業への参加度(10%)
積極的に授業に参加してください。
slackとITC-LMSを用います。
Comparative Study of Immigrant Education(2020年度Sセメスター)
日本語
takahashi[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp
東京大学教養教育高度化機構 社会連携部門・准教授 髙橋史子