2022年度Sセメスター木曜5限
“ベータ版”という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ウィキペディアによると、「正式版をリリース(公開)する前にユーザーに試用してもらうためのサンプルのソフトウェアである。ベータバージョンという場合もある。」と定義されています。
ベータ版を活用した有名な商品といえば、デジタル版のブロック遊びゲームと言われるMinecraftです。Minecraftは、2011年正式版リリースの2年前から、複数のベータ版をリリースすることで、ゲームを育ててきました。その結果、2020年5月時点で累計販売数が2億本超え、月間プレイヤーは1億2600万人以上という記録を打ち立て、テトリスを抜いて、現在世界で最も売れたゲームとなっています。
その他にも、LINE、YouTubeやTwitterなどのデジタルサービス、更にはテスラといった自動車でもベータ版が公開され、今では至る所にベータ版ありという状況となっています。それではなぜ今ビジネスの世界でベータ版が重要なのでしょうか?
正解がない不確実な世界に我々は生きています。近年は大企業だからといって、必ずヒット商品・サービスが生まれるわけではありません。特に実際にやってみないと成功するかわからない新規事業については、アクセンチュアの調査によると、立ち上げに成功したと躊躇なく言える経営幹部はわずか6%にとどまっています。
新規事業を成功させる鍵の1つに「小さく素早くトライアルする」ことで、可能な限りリスクをコントロールするという戦略があります。まずは投資規模が小さいベータ版をトライアルとして公開し、市場の反応を伺い、必要に応じて市場の意見を製品に反映させることで、商品・サービスを育てる一連のプロセスを素早く回すのです。
とはいえ、商品・サービスを育てるプロセスをただやみくもに早く回せばよい・・・というわけではありません。一連のプロセスを効果的に回すには、筋が良いアイデアを目利きし、アイデアのコア要素を適切に切り取りベータ版として仕上げ、市場の評価を的確に分析・反映することが重要です。そこにはコツが必要なのです。
私たちアクセンチュアは、世界有数の総合コンサルティング企業として、世界中の様々な企業と一緒に、新しいサービスをビジネスとして実現させてきました。その経験と実績を活かし、本授業では、初学者を対象に、アクセンチュアの現役コンサルタントと共に、商品・サービスを育てるプロセスを身に付けることを目的としています。
同世代の価値観やインサイト(潜在的な欲求)をインプットに、デザインシンキングという手法で“今ほしい未来”の新しいアイデアを生み出し・精査して、そのアイデアをもとに簡易プロトタイプ(検証のためのサービス・もの)を作成・検証します。そして最終発表では、ストーリーテリング(ビジネスを「物語」を通して表現する手法)を活用して、実際の企業の方へプレゼンします。
※2021年Aセメスターの授業(調査編)では、移動やオンラインでのコミュニケーションなど大学生の生活に近い領域について、同世代の価値観やインサイトを調査しました。
※本講義のプログラムは、構想編の授業からでも履修できるようにプログラムを構成しています。デザインシンキング、ストーリーテリング等の手法を学びながら進めますので、初学者の方も安心して履修してください。
アクセンチュア株式会社
髙橋史子
(東京大学教養学部附属教養教育高度化機構社会連携部門 特任講師)
・「私たちが今ほしい未来は何か?」という正解がない「問い」に対して、CX(顧客体験)、ビジネス、テクノロジーなどの視点から磨きをかけ、自分なりの解をみつける技術を学ぶことで、不確実な世の中も楽しめるようになる
・最適なベータ版を素早く作り、評価を的確に分析・反映する手法を学び、実践する
・ストーリーテリングをもとに人を説得する技術を学び、発表する
第1回(4/7)ガイダンス
・永遠のベータ版:新規サービス創出でのビジネス最前線
・ゼミに関する説明(ゼミの目的と目標、進め方、スケジュール、評価方法)
■調査編の示唆を基にしたアイデア立案
第2回(4/14)同世代の価値観を考える
・調査編講義で明らかとなった示唆の振り返り
第3回(4/21)今ほしい未来の仮説を考える①
・デザインシンキング講義・演習
第4回(4/28)今ほしい未来の仮説を考える②
・デザインシンキング演習
■業界エキスパートへのアイデア発表・インタビュー
第5回(5/12)発表の準備をする①
・ストーリーテリング演習
第6回(5/19)発表の準備をする②
・資料作成/プレゼンテーション演習
第7回(5/26)インタビューを設計する
・インタビュー設計演習
第8回(6/9)インタビューをする
・アクセンチュアの業界エキスパートへのヒアリング
■アイデアのブラッシュアップ
第9回(6/16)今ほしい未来の仮説を考える③
・インタビューを踏まえた仮説更新
■簡易プロトタイプによるアイデア検証
第10回(6/23)簡易プロトタイプの作成①
・プロトタイプ作成演習
第11回(6/30)簡易プロトタイプの作成②
・プロトタイプ作成演習
■企業の方への最終発表
第12回(7/7)発表の準備をする③
・最終発表準備
第13回(7/14)発表(発表10分、フィードバック10分程度)
※受講者数により授業時間を延長する可能性あり
・講義前半でチーム編成し、その後はチームでの作業が中心となりますので、体調不良などのやむを得ない事情による欠席を除き、すべての回に出席してください 。
・ゼミの内容は、リサーチ・インタビュー/アイディエーションについての初学者向けのため、事前の関連知識は特に必要ありませんが、グループワークへの積極的な参加が求められます。
・インタビューやプレゼンテーションを実施する講義の前には、その準備を宿題とします。また、講義時間内に課題が終わらなかった場合も、終わらなかった範囲を宿題とする可能性があります。
・20人程度(3-4年生も若干名参加可能です)
・履修を検討している人は4/7のガイダンスに必ず出席してください。ガイダンス終了後、履修希望の方はアンケートに記入していただきます。
・希望者が20名を大きく上回る場合には、アンケート内容をもとに選抜する可能性があります。履修者の決定は4/11にメールにてお知らせします。
takahashi[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp
東京大学教養教育高度化機構 社会連携部門 髙橋 史子 ([at]を@に書き換えてください)