多文化社会の共創

2020年度A2ターム:―移民難民第二世代の就職―

2020年度A2ターム ゼミ概要

日本社会には、古くからさまざまな民族的・文化的背景を持つ人々が生活してきました。特に、’70年代からはインドシナ難民、’80年代からはアジアを中心とするさまざまな国々から来日する人々、’90年代からはブラジルやペルーなど南米から来日する人々が増え、社会の多民族化、多文化化は増していると言えるでしょう。

なかでも、幼少期に親とともに渡日し、日本の教育を受けて育った子どもや、外国出身の親のもとに日本で生まれた子どものことを、移民・難民第二世代と呼んでいます。

移民・難民第二世代の教育においては、不就学、マジョリティとの学力・進学格差、差別、家庭内言語や文化の継承の難しさ、アイデンティティの確立の難しさなど、さまざまな課題が指摘されていますが(Sセメスター「多文化社会と教育―移民の子どもたちをめぐる現状と課題の理解」”Comparative Study of Immigrant Education参照)、本ゼミでは、彼ら・彼女らの就職活動に注目します。

日本では現在、グローバルに活躍することが期待される「グローバル人材」の育成が産学官の連携のもと目指されており、企業のなかには少子高齢化による人手不足やグローバル化・社会の多様化への対応策として「グローバル人材」の積極採用を行っているところも少なくありません。しかし、移民・難民第二世代については、その民族的・文化的背景の多様性にも関わらず、大学または大学院卒業後の就職がなかなかうまくいかないという現状が報告されています。なぜ、移民・難民第二世代の就職はうまくいかないのでしょうか。この問いの探求から浮かび上がってくる日本社会の現状、グローバル化に対する課題とはどのようなものでしょうか。

本ゼミは、上記の問題関心で進めている大学とマイノリティ支援NPOによる共同研究プロジェクトに基づいて、関連する知識の習得、調査データの分析、ディスカッション、レポート作成のためのフィードバックなどをインテンシブに行います。

グローバリゼーションや社会の多様化、移民・難民、大卒労働市場などのテーマに関心がある学生のほか、社会科学系の研究活動に関心のある学生、NPOなどによるマイノリティ支援の活動に関心のある学生などに受講してもらいたいと思います。

キーワード

グローバリゼーション、グローバル人材、移民・難民、就職活動、人材の多様化、多文化社会、調査研究

目的・目標

  • 日本社会の多様化、企業のグローバル化への対応、移民・難民の若者の社会参加について理解を深めます。
  • マイノリティの社会参加をテーマに、平等・公正と多様性について理解を深めます。
  • さまざまな知識、データを収集し、それらを分析し、問いに対する答えを導くまでの論理的思考力、批判的思考力を磨きます。 
  • 参加者同士のディスカッションや互いの分析に対するフィードバックを通じて、ゼミ生全体での成果を最大化する方法を模索します。

方法

  • 講義、ディスカッション等
    講義の中にも、知識をペアで確認しあうワークなどを取り入れます。
  •  2〜3回ほど、ゲストスピーカーを招く予定です。
  • その他、slack上で情報交換、質問、議論などを継続して行います。

スケジュール

内容 事前課題
1 11/25 ガイダンス
・本ゼミの概要、スケジュール、成績評価方法などについて ・レポートのテーマ、取り組み方・書き方について

イントロダクション
移民・難民第二世代の就職―グローバリゼーションと日本社会(関連知識の習得①)
 
なし
2 12/2 移民・難民第二世代の就職―グローバリゼーションと日本社会(関連知識の習得②)   文献購読
3 12/9 調査の概要  

難民支援NPOの活動
*ゲストスピーカー予定  
事前資料あり
4 12/16 調査結果①

難民第二世代の就職活動

*ゲストスピーカー予定  
事前資料あり
5 12/23 調査結果② グローバル化への企業の対応
*ゲストスピーカー予定  
事前資料あり
6 1/6 分析・ディスカッション①  
既存の知識や調査結果、自分で調べたことをもとに、「なぜ移民・難民第二世代の就職の難しさの背景にはどのような問題があるのか」についての分析を発表し、意見交換を行います  
分析の進捗状況を報告する準備
7 1/20 分析・ディスカッション②

まとめ
分析の進捗状況を報告する準備
2/5 レポート提出〆切  
第6〜7回で報告した分析に対するフィードバックや議論をもとに、既存の知識や先行研究と照らし合わせながら、問いに対する答えを論じるレポートを作成してください。  
 

履修上の注意

  • 体調不良などのやむを得ない事情による欠席を除き、すべての回に出席してください。
  • 授業時間外は、主にslackを用いてコミュニケーションをします。
  • 資料共有にはGoogle DriveやDropboxを利用します。詳しくは、ガイダンス時に説明します。

学習上のアドバイス

  • 11月上旬に、ゼミHPに参考文献リストを掲載します。
  • 質問やレポート作成のための個別相談については、slackまたはzoomでも対応します。

教科書

なし

参考文献

11月上旬に、ゼミHPに参考文献リストを掲載します。

成績評価

  • 出席・参加状況(30%)
  • レポート(70%)・・・2月5日(金)〆切 ガイダンス時にレポートのテーマを発表します。A4, 4枚以上10枚以内(図表、参考文献リスト、注など込み)
  • 多文化社会と教育―移民の子どもたちをめぐる現状と課題の理解(Sセメスター)
  • Comparative Study of Immigrant Education(Sセメスター)

言語

日本語

関連イベントのお知らせ

公開セミナー

難民支援NPOの活動
ー企業で働きながらNPOの活動を通じて社会課題解決を目指すキャリアー

認定NPO法人Living in Peace(LIP) で活動する龔 軼群さんをお招きして、LIP 難民支援プロジェクトの活動内容をご紹介いただきます。

LIPはスタッフの皆さんが、仕事をしながらNPOの活動に参加する形をとっていますので、企業等で働きながらNPOの活動を行うというキャリアについても、お話しいただきく予定です。

また、東京大学教養学部「多文化社会の共創―移民難民第二世代の就職―」ゼミの内容でもある、LIPと大学研究者による共同研究の目的・調査概要・調査後の展開について報告します。

日時

2020年12月9日(水)18:45〜20:15

*18:35〜入室可能

場所

オンライン(Zoom)

対象

ゼミ受講生、移民難民第二世代の就職に関する調査研究に関心のある学生・社会人、企業等で働きながら、社会課題解決のためのNPO等での活動を行うキャリアに関心のある学生・社会人

​参加費

無料

申込方法

申し込み方法フォーム(https://forms.gle/F1wiQRBATeKNdWu48)に必要事項を記入して送信してください。

数日以内に、担当者よりZoom URLなどの詳細を送信いたします。

多文化社会の共創へのお問い合わせ

takahashi[at]g.ecc.u-tokyo.ac.jp

東京大学教養教育高度化機構 社会連携部門 髙橋史子